劇場公開日 2021年7月9日

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83歳のやさしいスパイのレビュー・感想・評価

全44件中、41~44件目を表示

4.0【意味】

2021年7月10日
iPhoneアプリから投稿

セルヒオが最後に自問自答するように述べる言葉は、この作品の重要なテーマだ。

ただ、この映画にはもうひとつメッセージが隠されているように感じる。

それは、妻が亡くなり、日々、その面影から逃れることの出来ないセルヒオが、役割を得て、自分を徐々に取り戻すと同時に、役割を果たすための方法を考え、提案し、分析し、当初のミッション以上の役割をこなして、その過程で感じたことを最後の言葉につなげたことだ。

つまり、歳を重ねても、役割があれば、普通に考え、その役割を果たそうと努力するのだ。

この映画に記録されるお年寄りの会話の中には、年齢に関係なく、恋心が生まれることもあるのだと気が付かされたりするし、セルヒオが妻への愛を前向きに再確認する場面は良いエピソードだと思った。

タイトルが、そもそもスペイン語もスパイという表現を使っていて、イメージの中で誤解を招きやすいのかなと思う。それ程、緊迫するところとか、ドキドキするところはありませんので、スパイに期待はしないように!

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ワンコ

3.583歳のミッション:インポッシブル

2021年7月5日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

妻を亡くしたばかりで新たな生き甲斐を探していた83歳のセルヒオが見付けた広告。
それには80~90歳の男性が条件という探偵事務所の求人が掲載されていた。
求人に応募して採用されたセルヒオに課せられた業務は老人ホームの内定調査で、そのホームに入居している依頼人の母親が虐待されているのかを探るもの。
ここからセルヒオの人生最初で最後の「ミッション:インポッシブル」が幕を開ける。

セルヒオにはちゃんとスパイグッズも支給され、仕事だから日々の報告義務もある。
何せ83歳の老人だから電子機器の扱いは不慣れで初めは手こずるものの、根が真面目なセルヒオは何とか任務を果たすべく内定調査していく。
だが心優しく、妻を亡くしたばかりで悲しみの中にいる彼は傷付いている人を放っておけず、調査の傍ら入居者たちの良き相談相手になっていく。
そして当然のことながら、彼はホームの人気者となってしまう。
本作はドキュメンタリーでありながら、まるでドラマのようで、ノンフィクションとフィクションの境が朧気になって、正に「事実は小説より奇なり」の感がある。
果たしてセルヒオはミッションをクリア出来るのか?
まるで子どもに還ったようにホームの生活を楽しく過ごしているように見える老人たちが心に抱えているものが、セルヒオを通して浮き彫りにされていく。
そして、そのことからは「人生を如何に生きて、終えるのか」ということと、「家族とは何か、そしてどう在るべきか」を我々に問い掛けているような気がする。

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玉川上水の亀

3.03カ月だけの老スパイが突き止めた現実

2021年5月1日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

笑える

悲しい

入居者をぞんざいに扱っているという疑念がある老人ホームの内偵をすべく、83歳の素人老スパイが潜入するドキュメンタリー…ではあるが、施設の撮影をするという名目でカメラクルーも密着し、かつ内偵報告をする様子をドラマ風に演出している事からも、どちらかといえばモキュメンタリーに近い。
使い慣れないスマホを手に、大半を老女で占める入居者達に探りを入れていくが、なかなか手がかりを掴めない。しかし、そんな彼が持つのは、ジェームズ・ボンドのような殺しのライセンスではなく、優しさライセンス。このライセンスで老女たちのハートを掴んでいくあたりが可笑しい。
様々な悲喜こもごもが集う施設を3か月間内偵した末に突き止めた現実。あらかた予想はついていたとはいえ、あまりにもそれはシビアだ。

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regency

5.0探偵事務所に雇われて老人ホームに潜入した老スパイが辿り着く事実に胸がヒリヒリするドキュメンタリー

2020年11月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

舞台はチリ。“80歳から90歳の男性求む“、そんなあり得ない探偵事務所の求人広告に応募してきた老人達の中から厳しい選考を勝ち抜いたのは「求人広告を見た時にはついにボケたかと思ったよ」と語るセルヒオさん、FaceTimeやペンやメガネに仕込まれた盗撮カメラ等の使用方法の指導を受けて送り込まれたのはとある老人ホーム。入所している母親が虐待を受けているのではないかと疑うクライアントのために彼が見聞きしたことを全て上司のロムロに報告するのが任務。捜査期間は3ヶ月。早速任務を開始するセルヒオさんだったが彼の前に立ち塞がったのは何ともチャーミングな入居者達だった。

古いスパイ映画を連想させるレトロなオープニング。実は奥さんを亡くして間もないセルヒオさんは見るからに途方もない善人。人の話をちゃんと聞いて適切な助言をする面倒見の良さからたちまちモテモテになるくだりにはニヤニヤさせられます。登場する入居者達は皆チャーミングで、特に女性達は姑息な手段を使ってホームからの脱走を試みたり、淡い恋心を雄弁と語ったりと子供のようにピュア。セルヒオさんはそんな入居者やケアスタッフの人達と触れ合いながら淡々とホームの内情を調査し、ある結論に辿り着くわけですがその過程で入居者達が吐露する様々な思いのずっしりとした重さに心がヒリヒリします。いかにもラテン気質な登場人物達の太陽のように眩しい笑顔に照らされて浮かび上がる本作のテーマを微笑みながら噛み締めエンドロールを眺めながらさめざめと泣きました。

油断していると明日は我が身となる第二の人生。彼らのように自身の運命をしっかりと見つめながら清く楽しく生きていきたいと思いました。要するに物凄い傑作です。

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よね