「国境線の悪魔」息子の面影 MARさんの映画レビュー(感想・評価)
国境線の悪魔
アメリカへ出稼ぎに行くと言ったきり行方不明となった息子を探しに旅立つ母親の物語。
友人と二人で出かけた息子だが、乗っていたバスが襲撃にあった可能性があり、さらに息子の友人の遺体写真が見つかるものの、息子の死の証拠は出ないことから、今も生きていると信じる母親だが…。
終始静かで陰鬱な雰囲気の作品。
セリフというよりも、暮れかけたメキシコの荒涼とした大地、風や虫、川などが奏でる自然音が美しくも侘しく語り掛けてくるような雰囲気。
ゆったりとした流れで言葉数も少なく、普通ならウトウトとしてしまいそうな作風だが、不思議と引き込まれる展開。道中で出逢う、息子を亡くした母親、そして息子と同い年くらいの少年がまた物語をダルトーンに彩る。作中、笑顔とか一瞬も無かったんじゃないかな。
そして終盤。字幕も出ない回想シーン。言葉はわからないなりに脳内翻訳して観てみるが・・・。
メキシコ、特に国境付近は治安が悪いとは聞くけど、ホントにこんなことが珍しくないのだろうか。恐ろしすぎる。
そしてメキシコって、悪魔が広く信じられているイメージ。幻覚的に出すシルエットはストレートすぎるけど、夜道にボワっと浮かび上がる前方車両の光とか、なんか凄く上手く悪魔を表現しているように感じた。ゾワゾワ。。
ここからの展開は目が離せないですね。そしてこの結末、彼女にとってはいったいどういうものだろうか?衝撃的です。
兎に角、おもいっきりガツンと殴られたような気分になる作品。
それなりにお客さんは入っていたけど、エンドロール始まっても誰一人立ち上がらない。
それぐらいの深い後味の残る掘り出し物作品だった。
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