劇場公開日 2021年9月3日

「多様性の意味わかってる?やればいいってものじゃない」シャン・チー テン・リングスの伝説 バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0多様性の意味わかってる?やればいいってものじゃない

2021年9月4日
PCから投稿

単純な中国人が嫌いとか、ルッキズムの問題は論外だが、
「アジア人主人公最高!新時代じゃん!!」これも間違ってる。

少なくともこの映画の趣旨としては、差別をなくそうとはしているのだが、そのメッセージを発信している側が「中国人は目が細い」「カンフー」というステレオタイプなイメージを反映させていることが問題なのだ。

日本人もハリウッド映画で、日本のヘンテコ描写があると叩く人多いけど、中国がヘンテコ描写になってたって叩かないわけですよ。それは何故かというと、本当の中国の姿よりも漫画や映画、何なら学校の教科書といった媒体からの発信された、ステレオタイプなイメージが潜在的に植え付けられているから。

本当の多様性を求めるのであれば、ステレオタイプから脱却するのが長いスパンで考えれば、まず先にしないといけない。

シャン・チーというキャラクター自体が、カンフーブームに便乗して作られた、ステレオタイプの塊のようなキャラクターであり、実はこの70年代のカンフーイメージが世界から見た、現代の中国人像にも繋がっているわけで、それを現代にそのままアップデートして、マーベルとディズニーが世界に発信してしまうのは、更なる潜在的差別を生み出す原因になるのではないだろうか。

多文化が混ざり合っている中国や日本において、海外でキャラクター化した場合、どうしてもステレオタイプになることは仕方ない部分もあるから、非常にデリケートな問題であったからこそ、シャン・チーは今まで実写化されてこなかったというのに、このビジュアルと設定での発信はよいのだろうか?

特に中国の場合は、グローバル化が進んでいるわけで、そういった古臭いイメージからは脱却したいと考えているからこそ、中国人が主人公なのに、中国では公開できない可能性が出てきている。

そもそもが中国市場拡大と出資者獲得が製作意義のひとつとしてあったというのに、それが機能しない。さらにシャン・チーが登場している他のマーベル作品は公開されないとなると、チャイナマネーを意識している限りはマイナス。この際にチャイナマネーの呪縛から解放されるのもいいかもしれないが...

なら他の国で出資してくれる国は...そこで日本が手を上げれば、サンファイアやシルバーサムライが主人公の映画作ってくれるんじゃないだろうか?

作品自体もそこまで絶賛できるものではない。

『ブラック・ウィドウ』のケイト・ショートランドや次回『エターナルズ』のクロエ・ジャオも監督の「色」というのが反映されている。
もともとは監督の作家性を反映させるために、実験的にアクション映画とは無縁の監督をあえて起用していたのだと思うが、今作はそれとは逆に「ちゃんとしたエンタメ・アクション映画」になってしまっていること。

『グリーン・デスティニー』やチャウ・シンチー、ジャッキー・チェン作品から、そのままモノマネ的に取り入れられたシーンが多いが、それも仕方ない。だってアクション映画撮ったことないんだから...
人間ドラマ重視にしたくての、この監督じゃないのでしょうか?
本来であれば、父と子の関係、兄と妹の関係...といった部分で、もう少し濃厚なドラマが求められていたはずなのに。そこが薄い!!

一番いいのは、中国から現役の監督を引っ張ってきてやっていれば、もう少しリアルな中国人像を反映させられたのではないだろうか。

バフィー吉川(Buffys Movie)