「スピード感と圧倒的殺陣」シャン・チー テン・リングスの伝説 立風さんの映画レビュー(感想・評価)
スピード感と圧倒的殺陣
前半のスピード感がとにかくいい古来の中国の描写を見せつつ、アメリカ本土にいる大人のシャンチーに行くまで丁寧かつ一定のスピード感でブレずに見せていたのがかなり良かった
更にアメリカのアジア系アメリカ人の差別やアジア人同士の友情、男女の友情という今のリアルも描いていたのが良かった(ちなみにこのシーンもかなり伏線が効いているのは流石だと思った)
前半の山場である2回の殺陣のシーンは絵をしっかり重視しつつ、周りの障害も利用しつつの演出だったのでかなり見応えがあった。特に光に当てられながらのビルでの格闘は痺れた。
問題は後半であろう。まぁわかりやすく言うとアジア(笑)版ブラックパンサーになってしまった。龍の鱗の武器はヴィブラニウムだし、村は完璧にワカンダになってしまっていたのが残念。
実は卑怯の村がある的な演出はコングVSゴジラで既に見たのでもうお腹いっぱいであった。(麒麟や九尾の狐のシーンはデジャブか?とも思った)
前半はしっかりアジア人が想像する中国像なのだが、村は完全アメリカ人的なアジアだった。わかりやすく言うとベイマックスやエンドゲームなどに出てきた中国か日本かわからないアジアみたいな感じであった。エンドロールでオーストラリア?とあったのでそもそも中国で撮影していなかったのだろう。
ただ村のパートにいってもとにかく過去はしっかり掘り下げつつ、スピード感を保つという演出は素晴らしい。特に母の復讐の為に敵のアジトへ行き、復讐のシーンはあえて見せず少年シャンチーの横の鏡に映るというシーンは父親の残虐さを見せるシーンとして素晴らしいと感じたし、シャンチーの任務をあえて描かない(おそらく後々伏線にするのかも知れないが)のはMCU的だなと感じた。
正直ダークモンスター?的なパートは蛇足だと思ったが、父親との軽蔑や妹との共闘などしっかり制作側の意図がわかる作りになっていて新たなマーベルヒーローの一作目としては完璧だったと感じた。(正直この家族の演出をブラックウィドウでしてくれよと思う)
全体を通して言えることだがMCU特有の寒いギャグが今回はシャンチーの友人が担当する訳だが俳優さんの演技の上手さで成り立っているとしか思えない。今回は割と重い話とはなっているのであのキャラがかなり効いている。悪い言い方になるかも知れないが絶妙に可愛いか可愛くないみたいな顔が凄く愛らしいと思ったし、美人過ぎると友人役としては破綻していたのでナイスマーベルとしか思えない。
偽マンダリンもその役を担っているのだが厳密に言うと少し役割がちがうのでそれぞれいい役を出していたと感じる。
今回もディズニープラスでも観れるのだろうが個人的に水の演出や殺陣は大画面で見て欲しいので映画館で観ることをオススメします。