「あの日あの夏北イタリアの海辺の町で、僕たちは友達になったんだ」あの夏のルカ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
あの日あの夏北イタリアの海辺の町で、僕たちは友達になったんだ
ピクサー版『ポニョ』かなと思ったら、確かにそれっぽくもあるが、よりもっと王道。
人間と海の世界の子供たち。ひと夏の出会い、冒険、友情、別れ…。
時代設定や舞台がさらにノスタルジー掻き立て、見る者を“あの夏の日々の思い出”へ誘う。こういうのは万国共通。
1950年代。北イタリアのポルトロッソ。
美しい海に面した町だが、地元の人たちは海の怪物=“シー・モンスター”を恐れていた。
漁中に魚が盗まれたり、ちらっちらっと度々目撃。一体、どんな恐ろしい怪物…?
まだまだ子供であった。
シー・モンスターのルカ。
好奇心旺盛で、人間の世界に興味あり。
ちょくちょく海上に出ては覗いたり、海に沈んだ人間のものを集めたり。やってる事は同系列社の人魚姫と同じ。
そしてこれも同じ。人間に姿を見られてはいけない。陸に上がってはいけない。人間と関わってならない。絶対的なルール。
人間たちはシー・モンスターを恐れているが、シー・モンスターたちも人間を恐れている。
ルカの母親は過保護で特に厳しい。
ルカはいい子ではあるが、やはりどうしても人間の世界が気になり、好奇心に勝てず…。
ある時、潜水服を着た人間に見つかった!
…と思ったら、同じシー・モンスターの少年、アルベルト。
自称、人間世界通らしい。色々ルカに教える。
そんなアルベルトに誘われて、陸へ。姿が人間に変わる。
シー・モンスターは陸に上がったり乾いたりすると人間の姿になり、水に濡れると元の姿に戻る不思議な体質を持っている。
それからというもの、陸に上がって人間の姿になって、アルベルトと遊ぶのが楽しみに。
二人の人間世界の一番の関心は、イタリア製スクーター“ベスパ”。それに乗って冒険に出る夢を見、手作りしたりする。
人間の世界って、驚きや楽しい事がいっぱい。どうして人間世界に関わる事はダメ!ダメ!ダメ!なんだろう…?
アルベルトと陸に上がって遊ぶ事は勿論家族に内緒だったが…、バレてしまう。
怒った母親はルカを深海に住む伯父の元に預けようとする。ちなみにこの伯父、かなりの変わり者。
ルカは家出。アルベルトと夢を実現させようとする。
その為にまず、人間の町ポルトロッソへ。
初めての人間の町。当たり前だが、人間だらけ。
もし、シー・モンスターだとバレたら…。
怖がるルカに対し、アルベルトは楽観的。人間世界をよく知っているのか、ノリ任せでそうでもないような…。
ある時二人は、ベスパを乗り回す不良少年のエスコレに目を付けられる。
そこを、一人の少女ジュリアに助けられる。
当初はいがみ合いながらも親しくなったジュリアからある事を聞く。
このポルトロッソでは年に一回、水泳~パスタ早食い~自転車漕ぎのトライアスロンが開催される。優勝者には賞金が。
友達が居ないジュリアは毎年一人で出場し、エスコレに負け続けている。しかもゲ○ッた事で不名誉なあだ名まで…。
ルカとアルベルトは優勝して賞金でベスパを買う。
利害は一致した3人は“負け犬チーム”を組み、来るトライアスロンに向けて練習に励む事に。
シー・モンスターの子供が人間世界へ。そこで人間の子供と出会わなければ話が始まらない。
おとなしいルカとやんちゃなアルベルトとお転婆なジュリア。少年少女たちが出会って何かの為に頑張る。
何処の国もいつの時代も、子供たちは一生懸命。
泊まる所が無い二人の為に、ジュリアは家に泊めさせる。
ジュリアは普段は内陸の街の母親と暮らしているが、夏の間だけトライアスロン出場の為に漁師をしている父親の元へ。
無口で大柄で力持ちで怖そうなジュリアパパだが、パスタを振る舞ったり、レース出場の為のお金を稼ぐ為二人に仕事をくれたりして、優しい。
怖いのは飼い猫。どうやら二人がシー・モンスターである事に気付いているようで…。
ジュリアの隠れ家のツリーハウスに寝泊まり。夜空の星々が美しい。落ちたら危ないけど、でも何かいいなぁ、こういうの。
人間の世界って本当に危険なの…?
人間って本当に怖いの…?
人間世界をエンジョイしていたが…。
ルカの家出を知った両親が探しに陸に上がってきた。その探し方、相手の親に見つかったら問題ですよ…。
水泳はジュリア、パスタ早食いはアルベルト、自転車漕ぎはルカが担当。
始めは自転車に乗るのもやっとだったルカだったが、上達。3人で力を合わせれば優勝も狙えそう。
が、こういう時に限って…。
ジュリアの通う“学校”に興味津々のルカ。そこでは色んな事を教えてくれる。
特に天体に興味ありのルカ。ジュリアから図鑑を借りたりして、ジュリアと過ごす事が多くなる。
それが何だか面白くないアルベルト。
ルカはやがて学校に行きたいと思うようになる。
アルベルトは反対。一緒にベスパに乗って冒険に行くんじゃなかったのか。
それに、シー・モンスターを受け入れてくれる筈がない。自分たちは人間たちの嫌われ者。
初めての喧嘩。仲裁に入るジュリア。
アルベルトは正体を明かす。
驚くジュリア。
そこでルカはつい、アルベルトに酷い言葉を…。
アルベルトは海に帰ってしまう。
トライアスロンも間近という時に、友情の決裂。
優勝は?…というより、トライアスロンに出場出来るのか…?
3人の友情は…?
舞台のポルトロッソは架空の町だが、風景や映像がとにかく美しい。最大の魅力の一つ。
海に面した北イタリアの町。そこで少年時代に出会った別の世界(国)の友達…。
これらは全て監督自身の思い出だという。
思いが温かく綴られ、だから響く。
ルカたちもピュアで、キャラデザも可愛らしい。シー・モンスターの姿、『ウルトラマン』の海底原人ラゴンにちと似てると思ったのは私だけ…? あそこまで不気味じゃないけど。
子供たちの友情メインだが、家族の絆もそつなく。ジュリアと父親、ルカの家族。厳しい母、尻に敷かれている父、ナイスフォローしてくれるおばあちゃんは実は週末になると…。あの伯父は確かにヤだ。ルカが家出したくなるのも分かる。
アルベルトは灯台に一人暮らしで家族は居ないようだが…、父親についてちらっと。そんな彼がずっと一緒にいたいと思ったのはルカだった。親友を取られたくない。彼もまた孤独な子供だったのだ。
レースには出場。が、ルカもジュリアも一人一人で。
ルカは最後の自転車漕ぎでエスコレに並ぶ奮闘を見せるが、その時雨が…。ゴール目前にして、屋根の下に隠れ、身動きが出来ない。
その時、言うまでない助っ人が。
二人共雨に濡れ、正体がバレる。
二人は1位でゴールしていたが、エスコレは激しく非難。
シー・モンスターだぞ!優勝なんか認めない!
多くもそれに同調。
が、ジュリアやジュリアパパが二人を称えた事から、皆の目が変わる。
変わったのはレースを見ていたルカの両親も。あんなに頑張った姿を見せてくれた。母親は後悔。それを私は…。
小さな小さな頑張りが周囲を変える。差別偏見を乗り越えて。
ありのままの姿を受け入れてくれる。きっと、この世界は。
ラストは意外な別れになった。
ルカの両親はルカが学校に行く事を許す。ルカはジュリアと共に学校へ。
アルベルトはジュリアパパと暮らす事に。
新しい世界、新しい家族。
ルカとアルベルトの当初の夢とは違うが、それ以上の得たものがあった。
あの日あの夏、海辺の町。
出会って、冒険して、友情を育んで、別れてもそれは一生。
僕たちはいつも思い出す。
Wikipediaによると…
当初音楽はエンニオ・モリコーネが担当する予定だったが、死去で叶わず…。
イタリアン・マエストロが奏でるノスタルジックなピクサー音楽を是非聞いてみたかった…。