劇場公開日 2021年5月27日

「映画単体としては素晴らしい」クルエラ Spiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0映画単体としては素晴らしい

2024年1月26日
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鑑賞方法:VOD

101シリーズのヴィランであるクルエラ・ド・ヴィルの前日譚として作られた本作。
母を殺した仇を、家族同然に育ってきた泥棒二人組と共にファッションの力を使って追い詰めていくというオリジナリティに富んだシナリオは他に類を見ない展開でとても惹きつけられた。
彼女のファッションセンスの良さと奇抜さがこの物語の重要な要素なのだが、そこが映像に華を持たせているところも映画というプラットフォームにとても合っている。彼女の行うゲリラファッションショーはもはやイリュージョンであり見応え抜群。
彼女を支える泥棒二人組もどこか愛嬌があり憎めない悪役。それでいて復讐心に支配されていくクルエラを家族の目線で心配し、本当の意味での人の道を逸れようとしたところを救ってくれるバディとしてもはや原作を超えてキャラクターが立っている。

そして、今作の真のヴィランであるバロネスがまた非常に傲慢で残忍な悪役となっている。自分のファッション界での地位が揺らぐことがあらば殺人をも厭わない。そんなバロネスをエレガントな手法で追い詰めていく姿に、まさにダークヒーローとして惹かれていった。
映画単体として見てみると個人的には文句がない程に絶賛できる。

ただ引っ掛かるのは、これは101匹わんちゃんの前日譚として描かれているということだ。
アニメでも実写でも、そこで描かれているクルエラはバロネスそのもの。何故彼女は仇として恨み心底嫌っていたバロネスのようになってしまったのか、その肝心なところが描かれていない。
また、泥棒二人組であるジャスパーとホーレスも犬の皮を剥ぎ取れるような悪人になっていくなどとは到底想像も出来ないだろう。
では今作は原作とは切り離して見たほうが良いのだろうか。それにしては最後にアニータとロジャーにダルメシアンを贈り原作へと続いていくかのように描いている。
原作とは別次元のお話と言ってもらえればまだ構わないのだが、中途半端に繋がりを描いてしまっているのでその言い訳も厳しいだろう。

ダークヒーローとしてのクルエラ・ド・ヴィルを描いた作品としては手放しで褒めたいが、ディズニーヴィランとしてのクルエラ・ド・ヴィルを描けているかと言われるとかなり疑問が残る。
もし続編が作られるならその辺を掘り下げてほしいとも思うが、今作のイメージを壊しそうでやめたほうがいいかもしれない。

名作は名作のままで。

Spi