「普通に最高」クルエラ タロス99さんの映画レビュー(感想・評価)
普通に最高
ディズニー+で観賞しました。
いつだって大人達の勝手な都合で凄惨な子供時代を過ごしていたエステラ(クルエラ)
母親の命を奪われ、住む場所を追われ、路上暮らしを抜け出し大人へと成長。
憧れだったファッションの仕事につき、デザインの才能を認められつつも
上司であるバロネスは彼女を出世させず、こうしてまたも大人の搾取の対象となってしまうエステラ。
そんな中、母親の死の原因を知り、復讐を誓う。
バロネスの下で従順に働く一方で、仮面をつけダークな衣装を纏いクルエラと名乗りバロネスに攻撃を仕掛けます。
自身が憎んでいた大人という役柄を自ら演じ、本当の純粋な部分の「ファッションが好き」と言う価値観と最高のセンスで逆説的に仕返しし、更に才能を昇華していく様は最高にクールでした。
加えて70年代の反骨性あふれるUKロックと共にその時代の嫌な部分、現代にも通ずる様な最低な大人社会の事実に丸ごとNo!と言ってくれているようなそんな気さえしました。
ここからはただの希望的考察になるのかも知れませんが、
101前章談として描かれた本作。101の劇中、あの有名な楽曲でも象徴されるような、彼女が抱えるいわゆるフェティシズム。
彼女をヴィラン足らしめる象徴である、「生きてる動物の毛皮が好き」だから「生きた動物の毛を刈り」それで「服を作る」と言う部分が覆されます。
本作でも劇中終盤、復讐の鬼と化したクルエラがダルメシアンのコートを着て友人のブディック屋に行くシーンで彼女の口からはっきりとその毛皮は偽物であり、そして告げられるのです。
あくまで犬の毛皮を着るクレイジーを演じているのだと。
先述したように彼女自身が社会と言う不条理に立ち向かう為に、自身を恐怖の対象足らしめる「演技」なのだという事を
さらっと、あくまでさらっと語る場面があります。
従順なエステラも復讐に燃えるクルエラもどちらも自己実現であるファッションデザインで認められたいからこその演技。
本当のピュアな部分である「大好きなファッション」へのリスペクトと、生活の糧とする為にはこの世界・社会では彼女は演技を続けるしか無く、
101で鼻息荒くダルメシアンを追い回す姿もまた、一つの演技ではないかと思えてしまいました。本当は犬で毛皮を作っていないと。
最初から最後までファッショナブルでかつ熱い展開は往年のヒューマンドラマの中でも超ハイクオリティかと思います。
いわゆるケイパー物でもあり、ファッションものでもあり、復讐譚でもあり、全方位的に作られているのにバランスも良いです。
演出も演技も語り口も控えめにいって最高。
普通に最高に面白い映画でした。