パリの調香師 しあわせの香りを探してのレビュー・感想・評価
全8件を表示
しあわせの香りとは
調香師というと日本での企業に属して芳香剤などを作るイメージだったが、さすが香りの大国フランス、フリーランスの調香師という仕事があって、香水作り以外にもあらゆる匂いに関わる仕事をすることをこの映画で知って、お仕事ドラマとしても面白かった。
主人公のアンヌがHSP体質というか、鋭い嗅覚を持つ一方、感覚が繊細過ぎるために社交も苦手で仕事の営業はエージェント任せで来てしまっており、嗅覚が衰えてしまってからは特に嫌な仕事ばかりでさらにストレスを溜める毎日を過ごしているという設定がリアル。
ギョームとアンヌが結ばれるのかなと思ったら違うハッピーエンドが用意されていて、アンヌにとってはギョームは恋人というよりもバディになったのかな、はっきりとは提示されないところがフランス映画も今時の雰囲気。
ともあれ、分かりやすい邦題。
みんな幸せの香りが見つかって良かった^ ^
キャラの調合もお見事
香水作りの一線から退いて畑違いの匂い対策で糧を得ている調香師のアンヌと、家庭問題を抱えるハイヤー運転手のギヨームとの出会いと心の融和、再起への道程を描いた人間ドラマ。
香水作りも芸術的分野、嗅覚障害なんてベートーベンの苦悩を彷彿とさせますね。
それにしても、しっくりくる納得の邦題は久々の脱帽です。
香水なんておじさんには縁遠いが、遺跡の匂いの再現、ハンドバッグのなめし皮の匂い消しや、工場の排煙対策など事例のユニークさもあって興味をそそられる。ディオールやエルメスの実際の調香師さんが監修したとあって説得力も流石です。
調合の妙と言えばキャラ設定もしかり、ただの善良なオヤジでなく必然性のない自販機やスーパーでのちょろまかしシーン、高圧的で冷淡な主人公が次第に懐柔する様は北風と太陽のお伽噺にも似た流れ、特に華々しい内容も無く淡々とした日常を描いた映画ですが魅了されました。
香りも人もマリアージュマジック
変なタイトルつけたけど、「結婚」というより「別の2つのものが調和して予想外の効果をもたらす」という意味でマリアージュマジックな映画でした。
フランス映画は淡々としていて眠くなるんだけど、ほっこりな気持ちになる。
運転手の男性と、有名調香師の女性。
最初は相性の悪い組み合わせだったけど、段々と心を開いて頼れる仕事のパートナーになる。
運転手から無職になり、調香師になるなんて、人生ってわからないもの。
この映画で調香師の仕事がどんなものか知れて面白かった。
華やかな世界に見えるけど、地味でやりたくない仕事ももちろんある。スランプもある。
でも、香りが本当に好きだからできるんだなと思った。
懐かしい黄色い石鹸の香り、芝生を刈ったときの香り、
目で見た物や景色だけでなく、香りも記憶として残る。
そんな繊細な思い出を呼び起こせるって幸せ。
最後の学校のシーンはじんわりきた。
人間同士の化学反応が生み出すもの
自らの才能に気づき頂点を極めた女と自らの才能に気づかず埋もれていた男が織り成す物語。
調香師という職業ゆえに香りの殻に閉じ籠り、そこに人間臭さを失ってしまったアンヌ。
また彼女を取り巻く周囲の人間もビジネス至上主義で彼女の才能はお金を生み出す手段でしかない。
偏屈で頑固で変り者のイヤな女だと思ったけど本音は苦しくてしんどかったんだろうな。
調香師という職業の過酷さも垣間見た気がした。
「匂いだけが人間じゃない」、核心を衝く言葉に自分の殻を一寸だけ破ってみようとするアンヌが意地らしかった。
互いに余り多くを語らないが、二人の化学反応により、互いの人生が再生されていく、味わい深い話だった。
香水は人間を幸せにする香りなのだから、人間をしっかり見なきゃね、っていうメッセージはしっかり受け取れた。
しあわせの黄色い石鹸
酸いも甘いも噛み分けたベテラン調香師の女性と子供の親権が欲しくてたまらないバツイチ運転手が次第にお互いを理解し、補いながらやっていく過程を描いた映画でした。
嗅覚障害になってしまったり、スランプに陥ったりしながらも、立ち寄ったガソリンスタンドのトイレの黄色い石鹸の匂いに懐かしさを覚えて、癒され、落ち着きを取り戻してゆく女調香師。運転手の嗅覚のセンスを引き出し、弟子にして、新たな香水作りに挑戦する気持ちになるハッピーエンドストーリー。HERMESの香水作った人のいちばん癒される香りがガソリンスタンドの石鹸というところが庶民的でほっこり。
ガソリンスタンドのヘビースモーカーばあちゃんは小汚ない魔法使いみたいだった。
吸うか?あんなばあちゃんの噛んだフィルター付きタバコ? すぐバレて、おこられるに決まっているのにね。ダメな男が連れてきたしあわせのきっかけ。
冒頭の運転手の吸っているタバコの銘柄、ニコチン含量、葉たばこの産地を当てるところから引き込まれました。
子役の娘がおしゃまで可愛かった。パパ大好き💕なんですよね~羨ましい。何だって買ってあげたくなります。
このあと、女調香師と運転手は「パパの匂い臭い」って、年頃の娘が言わなくなる香水を開発して、大儲けしたりしてw
出会いが人を変える
調香師のアンヌは、ホントイヤな女だね。
高慢な感じが全開なんだけど、人を見る目はあるんだな。
どうして、ギヨームを再指名したんだろ?
ストレートに自分にぶつかってくれたからなのか、彼の真面目なところを見抜いたのか。
この二人が、どこかで恋に落ちてハッピーエンドになるんだろうなって、そう思いながら見ていたのに、そうならなかったところが、とても好感が持てました。
人生のこと、キャリアのことに焦点を定めてブレなかったところ。
人って、仕事に助けられる。
家族とうまくいかなくても、友達がいなくても、好きな仕事に出会えたら、今ある仕事を好きだと思えたら、何とか前を向いていけるのかな。
わたし的にはアロマ派だけど、ケミカルな匂いでも、香りって人をハッピーにする力があるんですよ。
イランイラン、ベルガモット、ペッパー、香りの元となる言葉だけで、何だかいい香りがしてきそうな、芳醇な映画でした。
正しい人間関係構築の先に
主人公の女性アンヌは才能に溢れた有名調香師。
数年前までは有名ブランドの香水を作っておりその道のトップを走っていたが、ストレスから嗅覚を失う。
今は回復するも昔の様な仕事には戻れず過去の実績を考慮され生活用品、日常品の香りに関わる商品の開発に携わる仕事を担う。
一方主人公の男性のギヨームは仕事を転々とし半ばフリーターの様な状態。娘の親権も奪われ自暴自棄になっている。そんな中新しくはじめたドライバーの仕事でアンヌのドライバーとなり彼女と互いにぶつかり合いながらも共に力を合わせて生きていく事となるヒューマンドラマである。
僕自身も有名ブランドの香水を愛用しており香水以外でも「匂い」、「香り」という点においてはとても親近感がありまたとても興味深い分野である為とても楽しみにしていた作品だったが期待したのとは違った作品であった。
もちろん匂いのプロ達の専門用語は作中で幾度となく使われているが、調香師ならではのドラマやストーリー性には欠ける。
あくまで主人公の二人が人生つまづいており、その一人の仕事が調香師ってだけであって別に他の仕事でもこの作品は成り立つ様に感じてしまった。
ただ詳細は違えど壁にぶつかる二人が、今までは自分勝手に真っ直ぐ生きてきたギヨーム、人との関わりをなるべく避け相手の存在をできる限り無視して生きてきたアンヌが出会う事で、共に今までの自分を見つめ直し、正しい人間関係を構築する事で最後はハッピーエンドで終わるところはとても温かい気持ちにさせてくれる作品であった。
変に恋愛描写もなく、ゆっくりゆっくりと心移りゆく描写は見やすくてこちらも優しい気持ちになれる作品ではないか。
全8件を表示