「『ドライビング Miss デイジー』ミーツ『トランスポーター』?何気ない仕草で物語を誘なう繊細で軽快な再生の物語」パリの調香師 しあわせの香りを探して よねさんの映画レビュー(感想・評価)
『ドライビング Miss デイジー』ミーツ『トランスポーター』?何気ない仕草で物語を誘なう繊細で軽快な再生の物語
離婚した元妻と娘の親権を巡って争っている臨時雇いの運転手ギヨームが元締めのアルセーヌから請け負ったのはアンヌという女性の送迎ドライバーの仕事。傍若無人に振る舞うアンヌにうんざりしたギヨームは一日でギブアップしたが、何故かアンヌは再度ギヨームをドライバーに指名。娘の親権のために仕事を選んでいる場合ではないギヨームは嫌々ながらアンヌとの仕事を請けたギヨームはアンヌがかつての天才調香師で、一時的な嗅覚障害が引き金となって業界から干されてしまい今は高級カバンの消臭やレプリカ洞窟に匂いをつけたりといった地味な仕事に甘んじていることを知る。
何となく『ドライビング Miss デイジー』や『グリーンブック』に似た感じのプロットですが、映像でも音声でも表現することの出来ない香りが物語の軸となっている点がユニーク。
ギヨームが吸っていたタバコの銘柄だけでなく使われている葉の原産地までも言い当ててしまうほどの鋭い嗅覚を持つ天才アンヌの孤独と、不安定な職業ゆえに娘と暮らすことが出来ないギヨームの焦燥がぶつかり合う中で二人の人生が新たな軌道に乗るまでを皮肉とユーモアたっぷりに描いた温かいドラマ。ナラティブな台詞ではなく何気ない仕草で物語を誘導する展開とちょっとした端役にもきっちり見せ場を持たせる丁寧な演出は監督が脚本も兼ねているからこそ出来る繊細なもの。いかにもフレンチな洒落た終幕もエレガント、地味ながら胸がすっとする爽やかな作品でした。
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