「突っ込みどころ満載で集中出来ない」ミッドナイト・スカイ superMIKIsoさんの映画レビュー(感想・評価)
突っ込みどころ満載で集中出来ない
NETFLIXでの鑑賞です。
本作は近未来SF映画ですが、余りにも突っ込みどころ満載で、集中して見ていられませんでした。
本作の設定は地球が危機的な状態で、人類が移住可能な星を調査する為に、木星のK23という衛星に調査隊を送ります。その旅の間に地球は更に重篤な状況に陥ってしまいます。
本作は地球に残された人と地球へ帰還する宇宙船内の物語が平行して描かれていきます。
まずこの設定ですが、木星ほど太陽から離れた太陽光線の乏しい場所に人間が住めるとは到底思えません。
また木星位地球と近い距離なら絶えず交信が出来ているはずで、突然交信が途絶えるということはあり得ません。更に地球の危機的状況を地球の軌道上まで戻ってきて知るということもあり得ません。木星程度の距離なら天体望遠鏡でも地球を観測することが出来ますし、さらに未来ならカメラで拡大してでも地球を確認することが可能でしょう。もうこれだけでもこの物語の設定に無理があります。
原作を読んだことはありませんが、原作がそのような設定になっているのではないかと思います。もしそうだとしたらそこは原作に拘らず、太陽系からもっと離れた星を目指した方が良かったと思います。
それ以外にも本作はイライラするシーンが一杯あります。例えば流星群に宇宙船が襲われ、交信アンテナが壊れます。船外活動で修理するのですが、それを女性スタッフが担当するのです。一人は船外活動前に緊張で食物を戻し、もう一人は何と妊婦なのです!! 無茶苦茶な設定ですよね、これ・・・。
その上慎重で緊張感を伴う船外活動の最中に、船内クルー達は大声で歌を唄っているのです。これはもうコメディです、絶対にあり得ません。
そして再び流星群に襲われて女性スタッフの一人が命を落とすのですが、ヘルメットの中に血が浮かんでいて何処かを負傷したことが分かります。しかし出血する程宇宙服が損傷すれば、その瞬間に窒息するか、真空状態の宇宙空間で減圧されて体内の血液が沸騰し、内部から肉体が破壊されるかで、即死です。しかしこの映画では船内まで生きて運ばれてくるのです。こんなのあり得ません。
大体緊張で吐いている人を船外活動させるわけがありません。もしヘルメット内で吐いたらどうなるか誰にでもわかるでしょう。また宇宙船クルーに妊婦って絶対にあり得ません。現在でも国際宇宙ステーションに男女クルーが滞在することはありますが、性行為は御法度でしょう。子供が産まれたらどうするのでしょうか??
地球でのシーンでも突っ込みどころ満載です。北極に一人残った主人公が宇宙船と交信可能な電波塔を目指して移動するのですが、途中暴風の中休憩していた小屋が建っていた場所の氷が割れて水中に沈んでしまいます。当然主人公は全身ずぶ濡れになりますが、その後服を乾かす場所すらありません。マイナス20度以下の厳寒の地ですから普通10分と生きていられないでしょう。勿論主人公は凍死することもなく、電波塔に辿り着きます??
また移動の途中に飛行機の墜落痕に遭遇します。しかし機内に瀕死の乗組員が一人生きています。これも墜落直後ならともかく、時間が経った状態で生きている訳ありません。まず凍死です。
最後のシーンですが、生き残った男女二人の宇宙船クルーが何か操作している場面で本作は終わります。ただ二人が座っている椅子がキャスター椅子なのです。床の安定しない宇宙船内でキャスター椅子は使えないでしょう。床にしっかりと固定されているはずです。椅子とはいえ吹き飛んできたら命が奪われかねません。
本作は見ているとまだまだ突っ込みどころが一杯ありますので是非見て頂きご確認下さい。
本来近未来SFというジャンルは見る人を納得させる世界観を作ることが大前提です。『2001年宇宙の旅』が大傑作なのはまずあの完璧な世界観があるからです。どういう方が権限を持って本作を作ったかは良く分かりませんが、エンドタイトルにあれだけスタッフの名前が出て来るのですから、一人くらいは指摘出来なかったのでしょうか? 「これおかしいですよ」って・・・。
この無茶苦茶な設定は論外ですが、本作の親子の関係を描くという物語のテーマはとても良いと思うのです。宇宙船に乗っている女性クルーは地球に残った主人公の娘です。しかしそれを女性クルーは知りません。主人公は最後までそれを明かさずに映画は終わります。とても胸に迫るシーンです。
また宇宙船の一部クルーは家族に会うために滅びつつある地球へと戻っていきます。これもとても良いシーンです。
本作のテーマはとても良いので、突っ込みどころを改善出来れば傑作になった可能性が充分あった作品です。何故こんな作品になってしまったのか? なにかとても残念です。