サマーフィルムにのって : 特集
「映画は人生」な人は全員必ず観たほうがいい一本です
映画人、俳優、観客からえげつなく評価される理由とは
映画人の間で、ある新作映画の噂が駆け巡っている。8月6日公開の「サマーフィルムにのって」。女子高生が時代劇映画をつくる青春物語なのだが、これがまた、えげつなく好評価なのだ。
聞けば「今年一番の大当たり」「映画ファンが愛すべき映画」「超爽快で奇跡的なラスト」など熱いコメントが出てくる、出てくる。行定勲(映画監督)、朝井リョウ(小説家)らも大絶賛、ここまで評価が高いコメントが、こんなに多く出てくる作品もそうそうお目にかかれない。もう映画好きならばチェックしていないと“嘘”とすら言えるのではないだろうか。
そこで映画.comでは、映画人たちの本作に対する評価を収集し、一挙にまとめてみた。こんなに多くの“最高なコメント”がずら~っと並んでいると、我ながら「すごく観てみたい」(すでに観ているのに)という気持ちがふつふつと湧いてきた。
「次にどんな映画を観よう?」と悩んでいる人は、ぜひこの記事を参考にしてみてほしい。本作、映画ファンにこそおすすめの一本だ。
【物語&ジャンル】私たちの青春は傑作だ――
映画製作と女子高生と時代劇とSFと 新・金字塔が誕生
最初に、あらすじをご紹介。物語をひとことで言ってしまうと、時代劇オタクの女子高生が映画制作に挑む姿を、SF要素を織り交ぜながら描いた青春ストーリーだ。
高校3年生のハダシは時代劇映画が大好きだが、所属する映画部で作るのはキラキラとした青春映画ばかり。自分の撮りたい時代劇がなかなか作れずくすぶっていたハダシの前に、武士役にぴったりの理想的な男子、凛太郎が現れる。
彼との出会いに運命を感じたハダシは、幼なじみのビート板とブルーハワイを巻き込み、個性豊かなスタッフを集めて映画制作に乗り出す。文化祭での上映を目指して順調に進めていくハダシたちだったが、実は凛太郎には未来から来たという秘密があって……。
主人公のハダシ役は、元「乃木坂46」の伊藤万理華。アイドル時代とはまた異なり、「こんなに上手かったのか」と驚くほどの稀有な存在感を発揮している。ほか凛太郎役に金子大地、ビート板役に河合優実、ブルーハワイ役に祷キララとフレッシュなキャストがそろい、監督は本作が長編デビューとなる松本壮史、脚本は劇団「ロロ」主宰・三浦直之が担当している。
で、本作はどのように評価されているのか? 次の項目から紐解いていこう。
【絶賛評の雨あられ】映画人が、俳優が、観客が
仕事や立場を忘れて熱狂&狂乱…何がそんなに良いの?
●著名人はどう観た? 行定勲、朝井リョウ、長濱ねるらが絶賛に次ぐ絶賛!
いわば“同業者”であり、ひときわ厳しい視線を注ぐ著名人たちは、本作をどう観たのだろうか? ライバルであることを忘れ、諸手を挙げて称賛するコメントばかりが目立った。
行定勲(映画監督/「世界の中心で、愛をさけぶ」「劇場」など)「伊藤万理華の途轍もないエネルギーが発火する瞬間を観た! ここで描かれる映画愛は未来を輝かせる」
朝井リョウ(作家/「桐島、部活やめるってよ」など)「夏の映画館で味わいたい全てがある。明るく楽しいシーンでも何故かずっとちょっと泣きたくなる、そんな特別な魔法がかかった映画。彼女たちの熱量に照らされて、何かを創ることで広がる未来があると信じたくなった」
長濱ねる(タレント・元「欅坂46」)「どうかハダシが守りたいものたちを全て抱きしめながら生きていける世界でありますように。未来は何度だって書き直したっていい!」
佐久間宣行(テレビプロデューサー/「ゴッドタン」など)「夢と創作と友情と恋がグルグル回って、キラキラ輝く青春も映画もあっという間に終わるのに、一生心に残るのは、想いがギュッと詰まってるからだろう。この映画はたくさんの人にとって、そんな大事な作品になると思う。青春映画だし、青春みたいな映画だ」
かが屋 加賀翔(お笑い芸人)「こんなにみんな大好きになる映画は久しぶりでした。伊藤さん演じるハダシを見ているとまるで自分がタイムスリップしてきてハダシの若い頃に立ち会えているような錯覚に陥りました。(中略)撮影はコロナで一度中断してしまっていたらしいのですが、本当に無事完成して観れたことが嬉しい作品でした。いちおしぜひです」
大根仁(映像ディレクター/「SUNNY 強い気持ち・強い愛」「バクマン。」など)「誰が言ったか『すべての傑作映画は青春映画である』。では青春映画の定義とは何か? それは画面の隅から隅まで、すべてのキャストと、すべてのスタッフの『私たちは、俺たちは、映画が好きで好きでたまらないんだよ!!に溢れていること』と、勝手に決めてしまいました。この『サマーフィルムにのって』を観たことによって。あとこの映画さ、大林宣彦も工藤栄一も勝新も三船敏郎も、ひょっとしたら黒澤明も観たら褒めてくれ……はしないかもだけど、きっと微笑んでくれるんじゃないかな? そして主演の伊藤万理華! 久々に現れた全身芝居女優!! 最高!!! もっともっとたくさんぶった斬ってくれ!!!!」
●“映画を観るプロ”たちはどう観た? 仕事や技術を忘れて激賞!
次に、いわゆる“映画を観るプロフェッショナル”たちの評価について。映画.comや様々なメディアで活躍する映画ライター、批評家、各国の映画祭で作品を選定するプログラマーなどが、仕事用の文体を捨て、生の感情を伝えてくれた。
杉本穂高(映画ライター)「コロナ禍で映画の未来がどうなるのか、不安に感じている人が多いと思いますが、この映画に描かれるような情熱がある限り、映画はなくならないんじゃないかと元気づけられました。時代劇好きもSF好きも、キラキララブコメ好きも、あらゆる映画を愛する人が感動できる珠玉の一本!」
高森郁哉(映画ライター)「勝新を敬愛する女子高生が撮影する時代劇、その劇中映画に主演する男子が未来人だとか、下手したら設定過多な絵空事に終わるリスクもあった企画に、アイドル然としない伊藤万理華の唯一無二の身体性が命を吹き込んだ。『時かけ』では主菜の扱いだった時間旅行要素が副菜にとどまり相対化されているのも、青春SF物の進化を目撃した感。熱い想いが届くなら、映画の未来はきっと明るい」
高崎俊夫(編集者・映画批評家)「カツシンの座頭市の居合い抜きに心酔する時代劇オタクのヒロインが、血湧き肉躍る活劇のフィルムメイカーへと転生する瞬間を見届けよ! 単なるオマージュを超えた荒唐無稽な<映画愛>がスクリーンに迸る瞬間を見逃すな!」
メルボルン国際映画祭「映画作りと友情を前向きかつ喜びいっぱいに描いていて、観た人々は現代の作品、過去の名作にかかわらず、映画というものにもっと興味を抱くはずです。映画の灯を消さないためには、才能を育てることがいかに大切かをこの映画は示してくれて、これまで監督たちをサポートしてきた映画祭として、非常に共感できる作品でした。Vive le Cinema!」
●ところで、映画ファンはどう観た? 映画祭での声をみてみよう
2020年10月の第33回東京国際映画祭で、本作をいち早く鑑賞した映画ファンは、果たしてどんな感想を持ったのか? より読者目線に近い、フラットかつ正直な評価をみていこう。
「映画祭の上映ラインナップが発表されたとき、これは絶対に面白い!と思って観ましたが、期待を遥かに上回るくらい面白くて最高な映画でした。劇場公開時、絶対にまた観に行きます」といった大絶賛や、「序盤での予想を軽やかに超えるラストが見事! 惜しむらくは、中盤の人間ドラマにもう少し厚みがあれば年間ベスト級だったのに……でも、これはこれで傑作!」といった偽らざる感想も。
さらに「伊藤万理華さんってこんな顔をするんだ、とか、金子大地さんって、ほえーとか。松本壮史監督やるじゃんとか、やっぱ舞台人の脚本はやるなあ」という声や、「新たな青春映画のマスターピース誕生! 季節を夏にした青春映画で一番大事だと思ってる“夏の匂い”が随所に感じられたのでもう満点」というシズル感のあるコメントが。
そして、何気ない日常のワンシーンや、クライマックスにも評価が集中。「ラストシーンがすごく好きでデカいため息ばっかりついてた。『江ノ島プリズム』『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』『アルプススタンドのはしの方』をひっくるめて演劇に携わったときのあの高揚感と疾走感で進む映画」という熱い感想や、自主製作映画を撮っていたという観客は「撮影合宿夜の『楽しい!』合戦のところと、編集のときの『勝負だよ!』のシーンでべーべー泣いた」と共感しっぱなしだったそうだ。
【編集部レビュー】結論:映画好きは早く全員観てくれ
最後に、映画.com編集部によるレビューコメントを掲載し、特集を締めくくろう。本記事はPR案件であるが、クライアントへの忖度とかそういうことを抜きにしてドハマリした、3人の正直な声を置いておく。
編集部A「映画大好き、時代劇超ラブ!な明るいオタクたちの青春物語。好きな事を全力で突き詰める彼女たちがまぶしくてたまらない。劇中の殺陣シーンもガチで安心のオタク・クオリティ。ラストの畳みかけが胸熱! 夏×高校生×タイムトラベル、絶対良いでしょ。オタクの皆さん、必見です! 私もこんな青春してみたかったぞ!」
編集部・岡田寛司「『だから、映画っていいんだよね』。本作では、この『だから』に連なる答えを、ハダシ組が全力で体現してくれているんです。誰かに『映画って、何がいいの?』と聞かれたら、言葉で語る前に、まずはこの作品を見せたい。素直にそう思えちゃう。『好き』と叫んで、『好き』に悩んで、『好き』を貫き通す。そんな登場人物たちが尊すぎます。鑑賞後、時をかけたくなりました。青春ど真ん中のあの頃へ。タイムマシン、早く完成しないかな……」
編集部・尾崎秋彦「個人的にはちゃめちゃ好きだったのはこれ。謎の特技『キャッチャーミットにボールが収まる音だけで投手が誰かわかる』を持つ駒田と増山(録音担当)、ママチャリをデコトラみたいにビッカビカに改造しているヤンキー・小栗(照明担当)というキャラです。彼らは当初、オタク⇔ヤンキーという食う・食われるの関係性でしたが、映画作りを通じて次第に打ち解けていきます。その感じがあまりに良くて、彼らを書けただけで本作の勝利は約束されたようなもの。このセンス、画面を観ているだけで生じる圧倒的な心地よさ。結論、映画が好きな人は一刻も早く観てくれ。そんな映画でした」