「我らの血が流れるなら、街中を血で染めろ!!」シカゴ7裁判 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
我らの血が流れるなら、街中を血で染めろ!!
1968年。ベトナム戦争のさなか、
シカゴの公園で大規模な「ベトナム戦争反戦デモ」が開かれた。
警察隊と衝突。
4500人以上が重傷を負った。
このデモを主催して《暴動を扇動した罪》に問われた7人と
ブラックパンサーの1人の裁判を描いている。
熱気とスピード感のある映像です。
被告の7+1名。
個性的で一癖も二癖もある寄せ集めの反戦メンバー。
ブラックパンサー党のボビーは、度重なる挑発的発言を繰り返し、
遂には猿ぐつわを嵌められ、机に縛りつけられる。
公衆の面前で公然とBLMが行われる衝撃的シーンだった。
更にその公判中に「ユダ&ブラックメシア裏切りの代償」
の映画の主人公のであるブレッド・ハンプトンが
頭をFBIに打ち抜かれて殺された。
裁判の終盤の「デモ」の再現シーンの迫力が物凄い。
暗闇の中で警察隊の催涙ガスが煙り、
クローズアップで警官とデモ隊の衝突は、激しくて、
殴りかかる警官、火炎瓶投げる学生、警官に掴みかかる学生・・・
と臨場感と迫力そして緊張感ある映像だった。
その後、
主人公であるトム・ヘイデン(エディ・レッドメイン)の実際に
録音されたテープが公開される。
トムは電信柱に駆け上がった未成年者へ警官が頭蓋骨を割られ
負傷する姿に我を忘れ、
「我らの血が流れるなら、街中を血で染めろ!!」と、
扇動演説をして、デモ隊は暴徒化したのだった。
物静かなトム・ヘイゲンと、その扇動演説の落差。
対してもう1人の主役、アビイ・ホフマン
(サシャ・バロン・コーエン)
アビイは常に人を食った発言で、笑いをとる。
この人の存在がこの映画にユーモアを加えている。
それにしても1968年。
ベトナム戦争は泥沼化して、兵役の徴集人数を倍々に増やして、
政府は死体工場(戦地)に若者を送り続けている。
これを怒らずにいられようか!!
アーロン・ソーキン監督は、
「平和な抗議が暴動へと発展してゆく過程を描くこと」
が、この映画の第一の目的だったと言う。
裁判の判決の日。
ラストシーン。
トムが読み上げる、裁判中に戦死した4500名以上の兵士たちの、
名前、
年齢、
階級、
戦争の虚しさと残酷さに、
陪審員も、
傍聴席も、
検事でさえ、
立ち上がり弔意を示す。
深く胸を打たれた。
琥珀糖さんへ
コメントありがとうございました!
「学生運動と政治裁判」を軸に描かれていましたが、「ベトナム反戦運動」に対する「治安維持」の名の元、「黒人民主化運動の精鋭化したグループの排除」、なんて事も行われてましたよ、と。そう言う見方もできる映画でした。ラストはグサッと来ました!