「作品はイマイチ!三浦春馬はピカイチ!」天外者(てんがらもん) おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
作品はイマイチ!三浦春馬はピカイチ!
毎年、大晦日は一年の心の汚れを洗い流すために、泣ける映画や生きる支えになりそうなものを選んで鑑賞しています。そして、今年の締めに選んだのが本作。正直、五代友厚については、名前ぐらいしか知りません。それでも、予告で三浦春馬くんが熱く演じる姿を見て、彼への追悼も込めて鑑賞してきました。
率直な感想としては、五代友厚の人柄が強く伝わる、力の入った作品だと感じました。彼が何を求め、何を目指して奮闘を続けたのか、歴史の授業では学べないことを学ぶことができ、たいへん勉強になりました。
しかしながら、映画としては残念ながらおもしろくなかったです。というのも、青年期からの五代友厚のエピソードをこれでもかと盛り込み、端折りすぎて観客が置き去りにされているような感じがしたからです。例えば、坂本龍馬や岩崎弥太郎、伊藤博文と、いつの間に親友同然の仲になったのか、豊子とはどういう経緯で結婚に至ったのか、終盤の大阪商人とのやり取りのその後はどうなったのか等、人物関係の描写が絶対的に不足していると感じました。
また、生麦事件、龍馬暗殺、明治政府誕生等の史実を絡めるのはいいですが、どれも唐突でこれが五代にどのような影響を与えたのが見えにくかったです。もう少し俯瞰的に史実に絡めながら描いてくれたら、五代友厚の功績がもっとわかりやすく、より感動的に伝わったかもしれません。特に終盤の市井のシーンで、これもこれも彼の功績ですと一気に言われても、まったく感動に結びつきませんでした。それでも、ラストシーンは、思わず涙がこぼれました。五代友厚の生きざまと、作中で熱く演じ続け、若くしてこの世を去った三浦春馬くんとが重なったせいかもしれません。
「海難1890」の監督と脚本家コンビということで期待しての鑑賞でしたが、いささか残念というか、モチーフを生かしきれないもったいさを感じる作品でした。とはいえ、目的に向かって私欲を捨てて挑み続ける五代友厚の生きざまは、本当に素晴らしかったです。コロナで散々の2020年でしたが、2021年は希望あふれる年になるよう、彼にならって自分にできることを精いっぱい頑張ろうと素直に思いました。