劇場公開日 2020年12月11日

「ポジティブな偉人伝が遺作になったことがせめてもの救い」天外者(てんがらもん) 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ポジティブな偉人伝が遺作になったことがせめてもの救い

2020年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

楽しい

興奮

献花する気持ちで劇場鑑賞する方も多かろう。主演俳優が他界して半年もたたずして興行に臨まねばならない関係者たちの辛さを考えてしまうが、大ヒットスタートと報じられたのは喜ばしい。

幕末維新の激動期に活躍した五代友厚の人生を描く本作。五代の存在は、朝ドラ「あさが来た」でのディーン・フジオカの好演で歴史に明るくない層にも広く知られるようになったが、映画の企画自体はドラマよりも早く2013年に市民有志によって立ち上げられたという。当然、予算面など制約もあっただろうが、主演の三浦春馬をはじめ人気の若手から演技派の中堅まで、大手配給作品と比べても遜色ないキャストが配された。三浦のはつらつとした表情、熱のこもった弁舌に心を揺さぶられると同時に、素晴らしい才能が失われてしまったことを改めて痛感。やや駆け足気味の物語構成ではあるが、ポジティブな偉人伝かつ青春群像劇であることに救われる思いがする。

高森 郁哉