劇場公開日 2020年12月11日

「日本的な「心」と「ものづくり」が感じられる映画」天外者(てんがらもん) ジパングJPさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0日本的な「心」と「ものづくり」が感じられる映画

2020年12月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

地元有志が主催の、予算的にはけして恵まれているとは言えない環境の中でも、あれだけ迫力があり、且つ人を惹きつける映画が作れるということに、まずは感動した。
確かに、厳しい目で見れば気になる点は多い。一流映画と呼ぶには相応しくないと思われる方も少なくないだろう。一度の観賞で内容を深く理解するためには、時代背景等の予習が必要なほど端折られているとも感じる。

しかしながら、この映画には、潤沢な資金に恵まれなくても知恵と工夫と協力で「目的」を達成するという、日本人的な「心」や「ものづくり」に対する姿勢が感じられるのだ。

どんな役柄でも常に手を抜かず繊細に演じ分ける三浦春馬だが、この『天外者』のしなやかな殺陣と、口角泡飛ばす程の力強い演技には度肝を抜かれた。リーダーシップを発揮する彼の新鮮な姿には、予告映像の段階でメロメロになる人が続出した。
前評判通り、「人の行動のきっかけになるような作品をつくりたい」という主演:三浦春馬の熱意と真っすぐな気持ちが伝わってくる映画に仕上がっている。

また、五代友厚と同じく「利他」である三浦春馬がそこここに感じられる。
その中の1つ、五代と龍馬が梯子の上から一緒に景色を眺めるシーン。自分の演技をこなしつつ、登り始めの不安定な縄梯子を三浦春馬が力強く支えているのにお気付きだろうか。
龍馬の足元をしっかりとサポートするのは、演ずる三浦翔平の安全を保つのが第一に違いない。しかし同時に、演技に集中させてあげたい、龍馬の最高の表情をフィルムに収めたい、という優しくクリエイティブな気持ちから自然と表れた行動なのだと感じた。
今回殆どのキャストが、時代劇が初めてとは思えないほど素晴らしい演技を披露している背景には、こういった三浦春馬の心配りが大いに関係していると想像している。

この映画の好ましい点は、終始、清々しい透明な空気が流れていることだ。
その透明感は、時代物に長けた田中光敏監督とスタッフの技術で作り出していることは間違いない。だが、五代を、日本を、もっと知ってほしいと損得度外視で集結した有志やキャストの「心意気」が、キリッとした「粋な」空気感を醸し出しているようにも思う。

内容的には地味で真面目であるが、五代友厚と三浦春馬の生き様が重なり、少しも退屈しない映画だった。
日本を良くしたいと思う心と、それに伴った勇気ある行動。
日本人が忘れている「何か」に気付かせてくれる意義ある映画だと感じた。

コメントする
コスモス