「三浦春馬さんの最後の主演映画となった作品。主人公の熱い想いは、今もなお生き続けている。」天外者(てんがらもん) 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)
三浦春馬さんの最後の主演映画となった作品。主人公の熱い想いは、今もなお生き続けている。
三浦春馬さんの最後の主演映画となった作品。
物語の規模は大きいですが、有志で作ったような作品であるため、そこまでのクオリティーを求めるのは酷なのかもしれません。
とは言え、「利休にたずねよ」や「海難 1890」といった硬派な作品を作ってきた田中光敏監督作品のため、本作もキチンと映画として成立していました。
舞台は幕末から明治初期で、現在の日本経済のベースがどのように作られていったのか等が描かれています。ただ、本来の史実はかなり入り組んでいるので、分かりやすい形で描かれるオリジナルストーリーとなっています。
主な登場人物は、坂本龍馬、(初代内閣総理大臣で、お札でも有名な)伊藤博文、三菱財閥を築いた岩崎弥太郎、そして、大阪経済を発展させ日本経済のベースを作った三浦春馬さんが演じる五代友厚です。
まず、坂本龍馬を三浦翔平が演じていることに最初は違和感のようなものを持ちましたが、
「坂本龍馬→武田鉄矢がリスペクト→武田鉄矢の物まねが得意な三浦翔平」
といった変換で納得しました。
また、映画では西川貴教をほとんど見たことがなかったので、「お笑い要員?」と思っていたら最初のシーンは不発で「あれ?」と思っていましたが、ラスト辺りで別の意味での良さが出てきます。
伊藤博文は(「ちはやふる」の机くんの)森永悠希で、こちらは自然に見ることができました。
そして、何と言っても希代の“天外者(てんがらもん)”【鹿児島弁で「すさまじい才能の持ち主」という意味】である五代友厚を演じた三浦春馬さんの役柄のフィット感は見事としか言うことがなかったですし、本編を見れば分かりますが、ある種の「運命的なもの」さえも感じる役柄でした。
私が本作を見て思い出したのは、三浦春馬さんが1月下旬に書いた以下の名言です。
「明るみになる事が清いのか、明るみにならない事が清いのか…どの業界、職種でも、叩くだけ叩き、本人達の気力を奪っていく。(中略)
国力を高めるために、少しだけ戒める為に憤りだけじゃなく、立ち直る言葉を国民全員で紡ぎ出せないのか…」
これは当時一部の人から「国力とか意味が分からない」等、批判もされていましたが、本作を見れば、この発言の真意が、より分かるようになると思います。この言葉は、これからどんな時代になっても、私たちが肝に銘じておきたい名言だと思います。
ちなみに、終盤は大阪が舞台となるのでクライマックスとなる演説会場には、群衆の中に現在の大阪府知事や大阪市長の姿もモブでいるので気になる人はチェックしてみてください。
100年先をも洞察する映像表現等は独自性があり、本作の見どころの一つで、私は気に入っています。