「無知と無関心が引き起こす戦争根源的諸問題」きまじめ楽隊のぼんやり戦争 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
無知と無関心が引き起こす戦争根源的諸問題
津平町は川向こうの太原町と長い間戦争をしている。
朝9時に開戦、夕方5時に休戦、毎日その繰り返し。
街の中では太原町は怖く残酷らしいとの噂、誰も疑わないし、誰もがそうだと決めつけている。
ただ、それは向こう岸でも同じで…
これこそ戦争映画。
第一次世界大戦でも第二次世界大戦でもない架空の戦争。
それでも、戦争に表出する問題を見事に風刺している、奇妙だけど現実的な作品。
なんで向こう岸の敵と撃ち合い続けるのか?
この戦いも最初は理由があったのかもしれないけれど、今や撃たないと怒られるから、怒られるのは嫌だから、という理由。
街の人々も「街のために」と敵やこの戦争について知ろうとしない。
個人は誰も悪くない。この戦争を良いこと、当たり前というようにしてしまっているこの空気が悪い。
淡々と過ぎていく日々。
代わり映えのない日常の中でも少しずつ変化することで物語が進んでいく。
盲腸が顔になり、顔が親知らずになり…
棒読みで違和感しかないがクセになる演技も、感情がなくなって受け身となった無機質な人間ということか!
とにかくリピートが多い。
物語の展開としてのリピートは変わらない日々に、セリフや動作のリピートはコメディ部分に、上手く作用していた。
所々にクスッと笑わずにはいられない場所もあるけれど、あくまでも戦時中という緊迫感が劇場にも伝わってきて、素直に笑えない。
受付での押し問答(終わって帰ってきてもまだやってる笑)や笑点の座布団のように増減するご飯は特に好き。
最後の新兵器のシーン。
街中パレードで高揚してからの爆撃、爆風、露木の表情。
あの瞬間、少なくとも彼には感情が戻ってきたような。
この戦争はいつともどことも指定されていない。
今我々の目の前で起こるかもしれない身近なおはなし。
今までを批判し、これからに警鐘を鳴らす、不思議な反戦映画でした。
余談:本当に関係ないどうでもいい話なんですが、映画序盤でヘルメットにとまった青い虫。
あれは蝶ではなく、そのサツマニシキという美しい蛾です。多分。
まあ、それだけなんですけど…