「風刺画?」きまじめ楽隊のぼんやり戦争 CBさんの映画レビュー(感想・評価)
風刺画?
今ひとつ気分が乗りきらない昨今で、俺は、この映画を楽しめるだろうか、という "リトマス試験紙的鑑賞" に臨んでみた。
結果は、かの不思議な映画を、それなりに楽しめたので、俺はまだ心が壊れてはいないようだな、と安心することができた。
映画は、全ての俳優が、無表情でカクカクと誇張された動きをし、1文字1文字を区切り気味の会話をするといったことによって、とても不思議な様子をみせてくれる。内容は、向こう岸の村と、毎日 9時から 5時まで、規則正しく戦争している村の、1兵隊が、ある日、軍の楽団員に任命されるという話。
たとえばある朝の町長の挨拶は、「日増しに脅威が増しております! どんな脅威かは忘れましたが。とにかく頑張りましょう!」だ。これだけでも少し雰囲気をわかっていただけるだろうか。
風刺絵ってあるでしょう。世界史の教科書にときどき出ている一コマ漫画。「日本と清が両岸から1匹の魚を釣ろうとしているが、橋の上からロシアが高見の見物をしている」といったヤツです。
この映画は、あの "風刺画" をたくさん、動画にしたものだと思えばいいのかなあ、というのが自分の感想だった。先に書いた、なんでも忘れてしまう町長も、「私の息子はもっと上流で頑張ってるよ。あんたたちも頑張りな」と話しながらご飯をもる食堂の女も、泥棒だったのに警官になって毎日煮込みをただ食いする若者も、すべての登場人物が、風刺なのだと感じた。
なぜ戦争しなければならないのか、なにが脅威なのかをあらためて考えることなく、戦うものだと思い込んでいる兵隊たち。息子がどんどん上流の戦地に行くのをいいことだ、出世の道だと信じている女。子供を産む女は素晴らしく、産まない女はダメだと思い込んでいる楽団長。「俺は何でも知っているんだよ。だけど向こう岸のことは知らないよ。向こう岸のこちは知らなくていいんだよ」と語る煮込み屋の親父。すべての存在、すべての行動が、風刺になっているのだろう。
しかし、そんなことを考えずに、ただこの映画の不思議な雰囲気に身を任せ、すべての会話を細かいギャグと感じながら聞き、そして、最後に再び流れる「美しき青きドナウ」のしらべを全身で味わえばいいんじゃないかと思う。映画を観るって、きっとそういうことだから。
CBさん、とても風変りな映画でしたね~
日頃から棒読み俳優のことはけなすのに、ここまで徹底されると笑うしかないw
ほかにも色々行間を読むこともできると思うのですが、とにかく気になったのが疑問形のミトくんでした。