この世界に残されてのレビュー・感想・評価
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さりげなくも秀逸なラストシーンが深い余韻を残す
初めて触れる感触の映画だった。舞台は1948年、ハンガリー。ホロコーストの記憶を作品全体に漂わせながらも、本作は登場人物の心に刻まれた深い傷跡をフラッシュバックで呼び覚ますような真似はしない。本編時間は88分なので、これに過去の出来事を盛り込んで100分ほどの映画にすることもできたはず。だが、そうしなかった作り手の意志が、この映画を特別な存在へと高めているのは確実だ。時に「不在」とは「強い存在」を意味することがあるが、本作はこの「何を描くか」という線引きを大切にしながら丁寧に描写を重ねていく。描かれないからこそ我々は彼らの表情に何かを読み取り、相手の人生に寄り添いたいとこれほど必死に願い続けるのだろう。そうしているさなかも、あふれんばかりの陽光が差し、作品に透明感や静謐感をもたらし続ける。さりげなくも大切なことに気づかせるラストシーンが素晴らしい。その余韻が今なおずっと胸に響き続けている。
❇️ほんの少しの仕草で二人の気持ちを表現している演出が凄い⭕️
この世界に残されて
1948年🇭🇺ハンガリー
※第二次世界大戦後
子供扱いされたくない思春期の女の子クララ。
クールな病院の先生アルドに興味を持ち、話しかけたり、押しかけてみたりしていた。
孤児院からクララを連れてきた母親が先生に父親代わりになって欲しいと頼む。
ひょんな事から母親と先生とクララで生活をしていく。
アルドに恋をして愛に変わっていくクララ。
色恋とはまた違う、親心?恋?愛?どれとも違う共鳴していく二人の物語。
◉72D点。
❇️ほんの少しの仕草で二人の気持ちを表現している演出が凄い⭕️
🟡見所!
1️⃣16歳と42歳の繊細な心の拠所を描く。
★彡戦争で家族を失った二人の心が表情や仕草で共鳴していく!
2️⃣クララがほんの少しづつ綺麗に成長していく!
★彡生意気さかりのクララだったが大人の女性になっていく様が⭕️
3️⃣自然に湧き出る感情や共鳴していく2人
★彡ちょっとした仕草で気持ちがわかるシーンが切ない。魂の深いところで共鳴している様が凄かった。
丁寧な映画
家族を奪われた絶望が2人の心を脆くうつろなものに
ここにも2人だけの愛のカタチ
この映画も、他者には理解され難い2人だけの愛の世界。
ホロコーストにより家族を亡くしたクララと医師のアルド。お互いに心の隙間を埋めるように寄り添う。クララの性格には共感はしづらいし、姪がたとえ信頼する医師とはいえ、他人の男性の家に寝泊まりすることを許すおばさんの感覚も理解しかねる。
とはいえ、3人の間にはこのシステムがぴったりなようで、本人たちがよければそれでいいのだが🥴
クララがダンスパーティーに行く時などはまさに父親が娘を心配する様がほのぼのして、
終盤の3年後には、アルドにも新しいパートナーができ、クララもダンスパーティーの時の彼と結婚する様子で、お互いに新しい家族を築いていく中で親戚のような関係が続いていくんだろうな。で終わる,そこそこ円満なお話。
愛のカタチはいろいろあるということですね。
42歳の男性医師と16歳の少女の出会い。 男性は少女に対し、父親の...
体温と肉感~~
ホロコーストによって家族を奪われ心に大きな穴が空いた2人が
心を寄せ合い、悲しみを癒し、やがて新しい生き方を始めようと
動き出すまでを描いた映画!
そう書くと良い話っぽいのだけど、どうも私は気持ち悪い。
何故なら主人公が42歳のおじさんと
16歳のちょっと大柄な女子校生だから~~
最初の方、無理に大人びた口を利いて背伸びしている少女が
アルド(その問題のおじさん)に幼子の様にまとわりつき、
1人になる事を極度に恐れる様子は可愛くもあり、哀しくもある。
アルドがシェービングフォームで髭を剃っているのを
狭い洗面スペースの端っこに座り込みじっと見つめるクララ。
二コリと笑って頬のシェービングフォームを
指でクララの鼻先にチョンと乗せるアルド。
そんなシーンは親子の様で心和む。
アルドもかつて妻と子供を奪われ生きる気力を無くしかけていた。
人目も気にせず纏わりついてくるクララの存在に
戸惑いながらも狭いベッドで背中合わせに眠るクララの体温を
守り育てる事で生きる意欲を見出す。
体温と肉感~~
実は数年前に精神的に落ち込んだ時に
誰でも良いからハグして欲しい~~みたいな
そんな時期があったので、体温と肉感~~
その癒しの力は解るんだけど
どうしてもちょっと気持ち悪い!
16歳の少女と42歳のおじさんとの暮らしは
どうしたって世間は誤解するし
ナチスドイツの圧政を逃れたものの
迫りくる旧ソ連の圧力と
大人になって次世代を生きてゆくクララを
自分に縛り付けては行けないという大人の判断で
徐々に関係を解消していこうとするアルド。
観ていてこのあたりで私はホッとしたわ~~
ホロコーストや旧ソ連の圧力など大きな悲劇を描きながら
人間の体温や肉感がいかに人を癒すのか
人間の根源的な映画でもある気がするわ。
42歳の医師と16歳の少女の関係は・・・
戦後の東欧諸国で前を向いて生きるということ
1948年のハンガリー、16歳の少女クララと42歳の医師アルドが出会い、一緒に暮らし始めた。二人はホロコーストを生き延びたが家族を失っていた。強いトラウマがあった。
お互いの傷がわかる二人だから痛みを分かち合うことができたんだろうねぇ。お互いが絶対的な存在になったが、時とともにそれぞれのパートナーと出会い、新たな人生が始まろうとしていた。
1948年、そしてそれからの40年。
ソ連の影響下で自由が失われた東欧諸国。
アンジェイ・ワイダやタル・ベーラの作品、そして昨年の『異端の鳥』などではの絶望的な閉塞感が描かれた。一縷の光も無かった。
今作では緊迫した状況の中にあって前を向いて生き始めようとする人々がいた。これもまた真実だろう。
わたしたちは塩素か?
3ヵ国語を使いこなすほど頭のいい少女クララ。しかし、学校ではそれが災いして落第する可能性もある。婦人科の医師アルドと知り合い、やがて父のような存在に変化して、最初は突き返そうとするアルドにも人と一緒じゃなければ生きていけないと感じるようになる。
ナチによるホロコーストや、戦後旧ソ連による鬱屈した様子はほとんど描かれないが、クララとアルドの表情や行間の意味を反芻することで心の痛みが伝わってくる。特に診察を受けていた頃のクララの目の下のクマ、アルドが次第に笑みを浮かべるようになっていく顔の変化が絶妙だった。また、おばさんのところに帰りなさいと言いつつも小さなベッドで寄り添う二人の光景が印象に残る。
「ひとりが怖いと娼婦なの?」などと、家族を失った少女の気持ち。16歳の少女と42歳の男なのだから男女の仲になってもおかしくない、そんな微妙な揺れもどこかにあったに違いない。抱擁、膝枕など、他人の目からはいかがわしく思われるのだ。そしてクララにとってはダンスパーティで知り合った青年ペペの存在、アルドにとっての美しい患者の存在も彼らの微妙な心に影響を与えていく・・・
彼らが塩素なら家族は水素。そして奪っていった者が酸素・・・そう思っていたけど、新たなパートナーが酸素だったのか?あっという間の3年後という結末はちょっと拍子抜けしてしまい、普通にそれぞれの新しい家族を築いていくことなんだろうけど、もう少しヤマ場があれば訴えてくるものがあったのになぁ。。
え、これで終わり?少し唐突感があります。この後に起きる歴史上の不幸な事件の前日譚と思えばいいのでしょうか。
1948~50年、53年の東欧ハンガリーを舞台とした作品です。
見終わったあとの感想としては、正直これで映画を終わるの?という印象です。
ナチスドイツのホロコーストを生き残った42歳の中年男性医師と16歳の少女が出会い、惹かれあい、一緒に暮らしていくが、ソ連の影響が身に迫って・・・というお話。
色々な方向に話を導くことができる素材ではありますが、映画の中では結末は大したこと起こらず家族構成に変化はありますが、ごくありふれた平和な姿で終わります。
旧ソ連の影響力が強くなっていくなかで人々の暮らしを淡々と描いた作品なのでしょうか?
歴史において、1953年に旧ソ連のスターリンが死んだあと、1956年にハンガリー動乱と呼ばれる反ソ連運動が起きますが、武力鎮圧されています。
反ソ連の家族の描写もありましたが、この不幸な事件の前日譚と思えばよいのしょうか?
(自分は世界史でチョッとだけ習った程度で詳しくないので、作品の背景を理解しきれていない部分があると思いますが・・)
こんな映画が観たかった
こんな映画が観たかった。
好みの問題かもしれないけど、ずっと観ていたい、映画の世界に没入していたいと思わせる映画でした。
時代背景と、当時のハンガリーとソ連の関係など歴史の知識がないと少し理解できない部分もあるかもしれないけど、それでもよかった。
特に派手なシーンがあるわけではないけれど、産婦人科医アルド(カーロイ・ハイデュク)の渋い演技、クララ(アビゲール・セーケ)が後半になるほど美しくなっていく。
この二人の愛は親子の感情?異性としての愛情?
抱擁するシーン 膝枕のシーン
この心の揺らぎは切なさだと思う。
卓越した心理描写、俳優さんの何気ない演技、丁寧に作られた作品だとつくづく思う。
もう一度観てみたいと思える数少ない映画でした。 映画館で観れて幸せでした。
ラブとライクの狭間
1948年のハンガリーを舞台に両親をホロコーストで亡くした16歳の少女と妻子をやはりホロコーストで失った42歳の婦人科医師の二人が、心を通わせながらお互いの痛みを癒していくプロセスを、ソ連による弾圧を背景に描いたヒューマンドラマ。
にしても主人公は16歳設定なのに、大人過ぎる。調べたら当時は21歳であったと思われる。もう少しなんとかならんかったものか。
内容的には脚本が悪いのか、どうも、ぼやけた感じというか、すっきりしない展開である。少女クララは性格的に難あり設定なので感情移入しにくいし、医師アルドは無感情。展開的にも単に何が起こるわけでもなく単なる日常を描いている。ラストは3年後を描いているのだが、ここもスッキリせずに終わる。期待値が高かっただけにイマイチ残念な作品であった。
ミニマムに、静謐に、機微を描く
ハンガリー事情に詳しくなくとも
親と子から男と女へ
複雑な距離感
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