「自分にとっての「正義」と」由宇子の天秤 tkryさんの映画レビュー(感想・評価)
自分にとっての「正義」と
人としての「正しさ」を天秤にかける女性の話です。
青臭いと言われながらも「番組は放映されてナンボ」というビジネスマンとしての清濁併せ持った正義感を持つ主人公。
外観を撮ってはならないという要請も、作品の価値を向上させるために無視。
つまり彼女が何よりも優先させているのは「彼女にとっての正義」であり、それは「人としての正しくなさ」も内包するということです。
(由宇子がモラルに欠けた人間という意味ではありません。むしろ逆と言っても良いです。)
由宇子は芯のある女性であり、問題が発生した際にも自身の正義に従って問題を秤にかけて、物事を進める人物です。
作中、由宇子が優先すべき「正義」と人としての「正しさ」に大きな溝が生まれてしまいます。
彼女は何が本当は正しいことなのか理解している聡明な人間であるが故にキツい。
そのギャップや起きてしまった結果の重さに耐えきれず、天秤が機能不全となり由宇子が終盤に取った行動は…。
このラスト回りが、本作を名作たらしめる所以だと思います。
上映時間の長さも気にならない、緊張と興味が持続する監督の巧みな手腕。
もちろん演者もレベルが非常に高く、隙がない。
観客の感情を誘導するための無駄な劇伴も、余計な説明セリフも不要。
手持ちカメラのみで観客を異次元の領域まで持っていってくれます。
そして語り過ぎないことで我々に余韻を与えてくれます。
本年度ナンバーワン邦画です。
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