「インディペンデントであり社会派エンタメという稀な一本」由宇子の天秤 ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
インディペンデントであり社会派エンタメという稀な一本
面白かった。見応えあった。瀧内公美とまさに旬の新人となる河井優実、ふたりの女優がいい。1時間くらいを費やしてドキュメンタリーディレクターとしての「獲物」を追う、弱者の側に立つ真っ直ぐな姿勢、実家の塾講師である父を助け、子供たちにも寄り添う反骨のキャラとして休む暇なく動く主人公。その事件の行方も充分気にかかるところへ自分の足元がゆらぐまさかの事件が発覚。追うものから追われるものに反転しかねないその事件の設定が上手い。ここからまさに天秤状態で本当のドラマがはじまる。寄り添っていた生徒との関係が別の意味を帯び、しかし、ヤバそうな父とその生徒の関係は上向き、なのでこの先が見ていられなくなる。さあどんな決断をするのだろうか、と。
まったくのインディペンデントでこのような社会派でかつエンタメな映画は珍しいのではないか。潤沢な制作状況でないのは見た目にもわかるが、逆にそれらも利点となっているような寂寥感溢れる現代日本の風景。監督の現代日本への怒りや不安が背景から見える。俳優陣もみな適材適所でこの台本を吸収している感じ。
しかし今年は邦画インディペンデントは豊作だ。
コメントする