オン・ザ・ロックのレビュー・感想・評価
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ソフィア・コッポラの父殺し
ソフィア・コッポラによる父殺しの物語と言えるだろうか。仕事に追われる夫が浮気しているかもしれないと気になる主人公は、プレイボーイの父に相談する。ビル・マーレイ演じる父のプレイボーイぶりは、おそらく他の役者がやっていたら、現代では相当鼻につく高感度の低いものになっただろう。プレイボーイは女性をもののように扱っても、なぜか許されるような、そんな魔力だが、本作のビル・マーレイには確かにそれがある。そんな父の影響を否定したくても受けている主人公は、いかにそういう男性像から抜け出せるかが課題となる。主人公は、古いジェンダー観を父から刷り込まれている部分がある。 軽やかなタッチで描かれるが、その主題は現代人にとって切実かもしれない。ジェンダー観のアップデートと父離れの主題が重なる。ソフィア・コッポラ作品の中でもとりわけ素晴らしい作品だと思う。
父と娘の浮気調査
旦那の浮気を疑い仕事はスランプ状態、子育てや生活に不満がありそうには感じない、困った父親との関係性は良好、深刻な事態に陥るような人間ドラマとしての欠如、至って普通に事が進む単純な展開、自分を含めた家族はリッチな家系、金持ちの悩みや道楽には付き合いきれないネ!? ビル・マーレイが演じる優雅で余裕がありながら破天荒でもある父親役はジャームッシュの「ブロークン・フラワーズ」や「ヴィンセントが教えてくれたこと」みたいに渋いオッサンとしての存在感が素晴らしい。 ソフィア・コッポラが撮る映画として単純明快さが否めない、余韻に浸れるような初期の作品を求めてしまう物足りなさが。 AppleTVにて鑑賞。
取り越し苦労
日本映画にはないが性愛や恋愛ではない男女関係は映画的だと思う。 ソフィアコッポラもそう思っている。(と思う。) ぜったいに発展しない男女はとても軽やかだ。 親密にならず、きらいにもならず、くっついたりはなれたりする展開からも解放されている男女は楽に見ていられる。 ロストイントランスレーション(以下LIT)が楽しいのはそこだった。 男と女。嫌われる心配も、好かれる心配もしないで、東京の夜をさまよったら、どんなに楽しいだろう。好き嫌いではないところで通じ合える連れがいたら、どんなに楽だろう。 監督はクオリティにムラがある。がSomewhereにもその気配があった。このOn The Rocksにも。 むしろ積極的にLITを狙っている感じがした。ビルマーレイってこともあり、あの魔法をもういちど、の雰囲気があった。 洋楽厨だったわたしにとってクインシージョーンズはむかしからよく見る名前だった。おそらくプレイヤーではない人物(プロデューサー)としては最も著名な人だったと思う。ただわたしはブリティッシュロックに傾倒する、こまっしゃくれた厨だったのでクインシージョーンズが関わったアルバムをほとんど聴かなかった。ただし、髭で美男で、あまり黒くないクインシージョーンズの顔は、昭和世代の誰もが知っていた。 その娘のラシダジョーンズを本作ではじめて見た。母親は白人なのでさらに黒人らしくない。ウィキペディアに 『ジョーンズは幼いころから自分のルックスが「黒人らしくない」ことに悩んでおり、大学2年のときに芝居で黒人役を演じたときは癒されたという。』 と、あった。 生まれは(人種や縁が)かけ離れた男女間であればあるほど優秀だと、どこかで聞いたことがある。配合バランスに加え遺伝子が良けりゃなおさら。ラシダジョーンズをひと目見ただけでも血統書付きなのはわかった。 やんちゃな父親にふりまわされる娘の話。 (LITで)ボブとシャーロットが探検した夜の東京は夢のように楽しかった。父娘でそれを再現するような展開がある (わたしは誰にも知られていない過疎レビュアーだが)今までLITのレビューを何度か書いた。 さいしょに書いたのはこんな書き出しだった。 『おそらく、誰にも経験のあることかもしれないが、いい映画に出会い、それがすごく気に入ると、同じような映画を探すことがある。 むろん、映画に限ったことではなく、小説や音楽アルバムでもそうだが、琴線に触れたことで、あの感動をもう一度、という状態になり、同じようなものを探しまくる。 そして、ご存じのように、その探索は、ほぼ成就しない。 同じ監督(作者、アーティスト)の作品でも「あれと同じ感動」は見つからない。 歳月を経て、なんとなく、そういうものだと、解ってくるのだが、今なお、お気に入りに出会うと、それ(のような作品)の探索状態に、陥ることがある。 ロストイントランスレーションを見た後の私は、しばらく、重症のロストイントランスレーション探索状態だった。しかし、この映画の滋味をもつ映画は、見つからなかった。同じソフィアコッポラの監督作のなかにも見つからなかった。 だからロストイントランスレーションを、何度も何度も、繰り返し見る。 上京するのに、電車使えばいいのに、わざわざクルマで行って、ジーザス&メリーチェインをかけながら首都高を走ったこともあった。(後略)』 ソフィアコッポラ自身がLITを再現しようとしても、やっぱりそれは成就しない。意地悪な揶揄になるが、もうビルマーレイも、夜の東京を走って横断できるほど若くない。 だがLITを好きな人がOn The Rocksを見たら、ソフィアコッポラがもういちどLITしたがっているのが、痛いほどお解りになると思う。 もういちどLITしたいからこそわざわざ老齢のビルマーレイをかり出して、やんちゃな金持ちに設定し、まるで節操のない行動をとらせて、ボブハリスをよみがえらせよう──としていて、そりゃとうぜん無理だったけれど、ソフィアコッポラがもういちどLITをしたがっている雰囲気は、LITファンから見て悪くなかった。 ひとつ思ったのが、ソフィアコッポラって、完全に上流階級の低回だよな──ってこと。LITもSomewhereもこれも、社会生活にまったく困っていない人物のなやみごとを描いている。だけどぜんぜん嫌味にならない。わたしは低所得者層だがソフィアコッポラの映画を見ていて鼻持ちならない──気分になったことがない。 画商で父親役のフェリックス(ビルマーレイ)はニューヨークの由緒ある高級レストランやバーでギャルソンたちとつうつうなのだが、それはとうぜんコッポラ自身の日常でもあるはずだ。 だけど──その上流階級が気障にならないのがソフィアコッポラ監督の持ち味のひとつであることがOn The Rocksを見て新たに解った。のだった。 知ってのごとく、ソフィアコッポラやLIT周辺は、おしゃれな監督/映画──と捉えられている。畢竟これも、おしゃれな映画ということになろうかと思われる、おしゃれな映画には、おしゃれな映画に寄せたい、(自称)批評家が群がってくる。 で、複数の批評家がこれをウディアレン風コメディ──と評していた。 ソフィアコッポラはLITみたいなのがやりたい。 冒頭で「ぜったいに発展しない男女はとても軽やかだ。」と言った。LITは疲れた者どうしが共鳴したのであって、男女関係に発展する懸念がなかった。Somewhereが叔父と姪なのも、本作が父娘なのも、それに因っている。 反してウディアレンはあくまで男女の恋愛話。ソフィアコッポラが恋愛を描いたことは一度もない。似ているどころかむしろ極北で相対する。 外国映画がおしゃれに見えても、おしゃれは映画を把捉する扶けにはならない。おしゃれに寄せてくる(自称)批評家がうさん臭いだけなのは、その理由による。
娘を持つ男親としてビル・マーレィにググッと感情移入して見てしまうな...
娘を持つ男親としてビル・マーレィにググッと感情移入して見てしまうなー 男としてのビル・マーレィの態度は真正しいと言うと娘に叱られるのであるが。 (このビル・マーレィ親父はY先生思い出す。)
じいちゃんが面白い
夫の行動に疑問を持った妻がプレイボーイの父親に相談し、一緒に夫を尾行しだす話。 夫が夜遅かったり頻繁に出張が有ったり夜の営みがご無沙汰だと妻は不安になるよね。 よくありそうな話をコメディタッチで描き面白かった。 妻役のラシダ・ジョーンズが可愛い。 父親役のビル・マーレイが面白い。
ママは大変
なんかこれ、舞台が日本でも、何の違和感も無く成立する物語だよなぁ、って思いながら眺めてしまう冒頭部。万国でお母さんは大変なのである。日本なら、ママチャリですけどねぇw ダンナの浮気疑惑を膨張させるお爺ちゃんと、二児のママになった一人娘のドタバタしない、ドタバタコメディ。地味で気の利いた脚本を、じっくりと撮った小品が大好きなんですが、これはイマイチでした。 もう、ストレートに言います。 これはビル・マーレイじゃ無くないでしょうか? 理由は割愛するけど。 勝手に「日本でリメイクするとしたら」の妄想。 脚本:足立紳さん 監督:英勉さん フェリックス:役所広司 ローラ:松岡茉優 ディーン:小栗旬 フィオナ:中村ゆり NYCPの警官:仲野太賀 舞台は東京、北海道。雪で欠航。オチはクリスマス。 コメディとしては行けそうだけど、人は入ら無さそうw
【”父親はいつでもいつまでも、娘を大切に思っている。けれど、行き過ぎると・・。どう見ても、ソフィア・コッポラ監督の実体験をネタにしたと思えてしまう面白き作品。ビル・マーレイの魅力全開作品でもある。】
―ニューヨークで暮らすローラ(ラシダ・ジョーンズ)は夫ディーンと娘二人と幸せに暮らす日々。彼女も執筆業をしている。 が、ある日、酔っ払って彼女のベッドに入って来た際の夫の態度と、度重なる夫の出張とで少し夫に対する疑念が・・。そして、見つけてしまった夫の出張用スーツケースの中に入っていた”ピンクのハートマークが沢山デコレーションされた”ポーチを見つけてしまう・・。- 疑念渦巻く悩めるローラ。つい、相談してしまったパパ、フェリックス(ビル・マーレイ)は、画商の仕事もそっちのけでローラをそそのかし、二人でディーンの尾行を始めるが・・。 ーパパに相談するってことは、既に母親とは離婚していると思われる父親との信頼関係がある事が分かるし、面白いのはビル・マーレイ扮するフェリックスの真面目な顔をしながらも(ビル・マーレイだからね。)、内心嬉々として、娘を奪った男の浮気現場を捕らえようとする姿である。ー 又、彼のその人脈の広さにも驚く。 ■パパ、フェリックスの人脈 1.ロンドンのホテルのコンシェルジュ→ディーンのイギリス出張の状況を調査! 2.夜のNYを信号無視して、ディーンが疑惑の女性と乗ったキャブを追いかけ、警官に捕まっても、その警官の祖父とお友達→見逃してもらっただけでなく、エンストした古い真っ赤なアルファロメオを押し掛けまでしてもらう・・。 3.メキシコの宿の女主人→ディーンの主張先まで押し掛けるに頼る・・。 が、パパ、フェリックスもかつては、数々の浮名を流し、母親とローラを悲しませていた。その事を、ローラは追及するが・・。 <ローラとビル・マーレイ扮するフェリックスとの随所でのやり取りが面白い。 どう見ても、ソフィア・コッポラ監督が父、フランシス・コッポラ監督を想起して書き下ろしたとしか思えない作品でもある。> ■蛇足 将来、娘が結婚し、その相手が浮気しているようだと知った時には、フェリックスのように、湯水のごとくお金を使って浮気現場を押さえてやる! などと考えていたら、何だか楽しくなってきた・・。 男とは、幾つになっても、おバカな生き物なのである・・。 <2020年10月31日 刈谷日劇にて鑑賞>
この映画も
前情報なしで観たのだがまあまあな印象 旦那の女関係を疑う妻が女性関係の豊富な父親に相談して起きる物語 ちょっと観てる時に必要以上に笑う人が居て 映画に入るのを阻害された感じ そこまで笑う映画じゃないでしょ〜 ビル・マーレイ=お笑いの人の印象なのかもしれんが 映画好きとして理解できなかったなぁ 映画の内容としては可でもなく不可でもなくと言った印象かな
タイトルから結末を導き出した人がいるかも知れませんね。
タイトルは含蓄に富んでますね。ふ~む、そう来るか。監督のセンスです。SUPER☆とんでる爺じムッシュと夫の行動をあれこれ妄想して一人で葛藤している娘とのプチロードムービーか。内容はよくある世間話かも知れないが爺じムッシュが娘婿殿の行動を勝手に調べ娘を無理やり連れ回す。白黒きっちりハッキリつけようと宣言する。お~清々しい。結局、娘は悩んでいる暇もなくムッシュに巻き込まれる。これが功を奏して娘の気持ちを救うことになる。ムッシュが自分に自信を持てばセンシュアルで魅力に見えるよ、と。なかなかの名言だ。ある日豪奢な邸宅でのアートパーティでご高齢マダムが、結婚はコスプレよ、と、確かに女優になり様々なシチュエーションをイメージすれば魅力に溢れ自信にも繋がる。ハイブランドのカルチェの腕時計で《氷解》。オンザロックの氷が溶けてHAPPY。結局、深紅の小箱が勝ちかよ、なんて無粋なこと抜きに人生は《オンザロック》だな。娘を伴いメキシコまで飛ぶ行動力抜群のムッシュに惚れそうだ。
毎日が誕生日!スナックのママさんみたい・・・
クリスマス並みに1週間ほど誕生日プレゼントが届くスナックのママさん。時計ありがとー。古いの外すわ・・・的な、最近飲みに出てないからわからないけど。夫婦の場合でも誕生日が続くんですね。 A24製作ってのは、最近ツリのような気がして仕方がない。「美しい人はより美しく。そうでない方はそれなりに・・・」って感じで作り続けてる気もする。それでも本作はまぁまぁの映像でしたが、ソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』ほど画期的ではなかった。しかし、当時のスカーレット・ヨハンソンがそのままママになったような、そんな女性の心理を上手く表現できていたおかげでいい作品になっていました。 お洒落なお店と対照的に生活感溢れる日常に、ストーカーのようなマニアックの父が加わり翻弄されるローラ。父との関係も何も確執がなかったかのように打ち解けることもできたし、徐々に父親と夫を比べてしまうように見受けられましたが、夫が父のように八方美人のプレイボーイではなかったと安心していく様子もお見事。 タイトル通り、娘にはカクテルとサンデー、自分はウィスキーのロックを注文するフェリックス。夫婦関係が崖っぷちという意味も含ませていたのでしょう。それにしても雑学知識もすごいフェリックス。けっこう使えそうなネタもあったのに、家に帰ってみると全く思い出せません!ほんと役に立たない雑学だったのかも・・・「男はすべての女を妊娠させたい」しか覚えてない。
ビル・マーレイの魅力に酔う粋で大人な逸品
監督・脚本はソフィア・コッポラ。ビル・マーレイとラシダ・ジョーンズが父娘役。 夫の浮気を疑う娘を過剰にサポートしてしまうマーレイ。娘と楽しみたいだけなんだよね、父親というもんは。嫁に行った二人の娘を持つ自分はマーレイに強いシンパシーを感じた。 「ロスト・イン・トランスレーション」から17年、歳をとったとはいえ、この作品のマーレイってめちゃカッコよくないですか? とにかく粋な作品。さすがソフィア・コッポラと言いたくなる粋な作品でありました。チェット・ベイカーやビル・エバンスの使い方もさりげなくてホントお洒落。 これは大人な、そして上級者向けのメルヘン❣️ いい気分で帰路についた。
おしゃれに仕上げました。
シンプルでわかりやすいテーマにいろんな飾りをつけて小綺麗にまとめ上げましたといった内容。 特にひねったところはなくとも雰囲気で最後まで飽きずに観られた。 なんだかいかにも女の人が創った柔らかい作品という感じがした。
哀愁ビルマーレイ
父と娘、どちらの視点で物語を追うかで感想の分かれそうな映画。 私は父視点だったので、ラストが物悲しすぎて温かい気持ちで劇場を出ることはできなかったかなあ。 父の自業自得なんですけどね。でも常に娘第一!を貫き通してるのはあっぱれだなと思った。 リッチでスノビッシュでどこか夢の国のお話、みたいに人生を描くのは、ソフィアコッポラの特徴なんだろうなあ。 そんなわけで、遠い国のお話感が強くて、ふわっと観終われる映画。
マティーニが飲みたくなるかも
ビル・マーレイ演じる父親は娘婿の尾行をするのに赤いオープンカーでキャビアを食べるという浮世離れした愛すべき人物。 ラシダ・ジョーンズの娘は子育てに追われスランプに陥った小説家。夫の浮気を疑ってしまうけれど、父親の価値観に振り回されて真実を見失う。 二人が会うのは、ニューヨークにあるちょっとオールドスタイルのレストラン数カ所。決まってオーダーするのはストレートアップスタイルのマティーニ。ジンはボンベイサファイアらしい。父親は最初はオン・ザ・ロックだったのに娘に合わせてストレートアップばかりに。 題名の『オン・ザ・ロック』は頑な心を持った娘が心を解いていく過程をカクテルの楽しみ方になぞらえたのだと思いました。
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