「ネガティブも、開き直ればポジティブ」ヒトラーに盗られたうさぎ Jun Tanakaさんの映画レビュー(感想・評価)
ネガティブも、開き直ればポジティブ
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大戦前のパリは、魅力的だ。パリが世界で最も輝いた時代、華麗で、自由を謳歌し、それでいて妖しげな魅力を放つ。様々な理由から、暗黒の時代直前のパリが一番良好きだ。
そんなパリでアンナ一家は、貧乏な暮らしを強いられる。懐に余裕があったら、さぞかし華のパリを堪能できただろう。しかし、彼らはパリで貧乏を楽しんだ。ここまで来ると、ファンタジーの世界だ。本当は辛いパリ生活だったかもしれないが、幼いアンナは、初めて住むパリを潜在的に美化してしまった。
子供の視線だから柔らかく優しい。反ナチのような強烈なメッセージはなく、ナチのおかげで、家族の絆が強まり、ヨーロッパ中を旅した、そんな夏休みの家族旅行のような雰囲気を醸し出す。
ラストのパリからイギリスに引っ越す船の中では、新しい生活への希望と好奇心が、気持ちを高揚させる。ホロコーストを忘れてはならないが、同じように希望を捨てずに生きる事も忘れてはならない。絵本作家の視点は正しい。
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