「限りなく良い意味で「地味」」ベイビー・ブローカー キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
限りなく良い意味で「地味」
会話シーンは多いが、状況説明のためのセリフは本当に少ないので、こちらがしっかり読み取る必要はある。
ただ、そこに溢れる情感の豊かさはやはり是枝監督ならでは。
現実として「違法」か「適法」かというラインはあるが、決してそれはそのまま「正しい」か「間違っている」かの答えにはならない。
むしろここに「正解」なんてない。
ただただ明らかなのは「生命は尊い」という事実。
誰だって聖人君子ではいられない。
格差社会の中で、生きるためにモラルに反することもある。
「それでもいいんだよ」
自分の存在を肯定されることで、どれだけ人が救われることか。
俳優たちの抑制された名演。
ま、韓国の名優が名を連ねているのでこの辺りはむべなるかな。
ソン・ガンホはクリーニング屋さんで、服をきれいにしたり、ボタンやほつれを直してまた洋服として生き返らせるという役どころも、この映画の中で象徴的な存在であったりするのもうならされてしまった。
決して分かりやすい作品とは言えないし、大きな映画的クライマックスが待っている有るわけでもないが、それぞれが赦し合い、認め合うことでカタルシスが生まれるという、憎らしい演出が素晴らしい。
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