「理想的なコミュニティ」ベイビー・ブローカー せつこんさんの映画レビュー(感想・評価)
理想的なコミュニティ
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赤ちゃんを売買するブローカー2人と赤ちゃんをベイビーボックスに預けた母親の里親探しのロードムービー。
『万引き家族』と同じように犯罪で結ばれた人達が擬似家族のような絆を築いていく話なんだけど、本作の方がラストにファンタジー的な爽快さがある。売られる予定だった赤ちゃんウジンは、女刑事に預けられ引き取る予定だった夫婦とも交流があり、実の母親ソヨンとの再会も匂わされる。
実の母親だとか母親と知り合いだとかに関係なく、1人の子供を皆で守り育てていく理想のコミュニティ。日本で撮った『万引き家族』が現実的な終わり方だったのに対して、海外で撮った本作は"ここではないどこかの理想郷"感がある。だから日本人目線で見ると納得しちゃう。
『万引き家族』では取り調べを担当する警察官が外からの目線という形式上の人物でしか無かったのが、今作では女刑事2人をちゃんと人間として描く。女の子の方が200万安いことに腹立つし、専業主夫のような旦那さんがいたり、道中色んなものを食べてぶつくさ言いながら、不思議な擬似家族を見つめていく。
この2人もちゃんと人間として出てくることで色んな価値対立が発生して面白かった。「子を捨てる親は無責任」vs「やむを得ない事情で子を捨てる親」vs「かつて自分も捨てられた」みたいな。この色んな価値観が最終的に1人の赤ちゃんを守ることへで集約されていくのが清々しかった。
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