「邦画で、このレベルのモノが作れない事に悔しさも感じつつ。」ベイビー・ブローカー bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
邦画で、このレベルのモノが作れない事に悔しさも感じつつ。
ソウルに向かう新幹線の中でのソヨンの心象表現にドキッてなった。まごう事なく、是枝作品の真骨頂ですよ。日の指す明るさの中では、自嘲気味の冷たい言葉。トンネルに入り表情を読み取れない暗がりの中では、弱さと本音を垣間見せ、再び明るさの中に入れば、また強がる。コレが灯りを消したホテルのベッドに仰向けになりながら、皆に語りかけるシーンに繋がって行きます。
韓国人監督の韓国映画にゃ、こんなの無いからw
もう、コレとか、観覧車のモザイク再現からの涙のシーンとか、是枝は死んでない!ってのを実感しました。
今月の「滑ってしまった失敗作」になりそうな映画の大本命だった本作ですが、とんでも無いです。なんで、あーんなに賞を獲りまくったのか分からなかった、あの韓国映画が想像レベルだったんですが、コレはガッツリ芯を食ってます。
良かった。とっても。
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(6/26追記)
考察、って言うほどのものでもありませんが少しだけ妄想。
「人身売買」の買い手は、あの夫婦だが、売り手側には実の母親がいるため、ブローカーとしてのサンヒョンとドンスの立件は検察次第。おそらく立件していない。つまりドンスはフリー。
ホテルで殺害された男は例のヤクザの組員で、4,000万ウォンは夫婦から受け取っていた赤ちゃんの売買代金だが、警察は売買代金として処理していない。ソウルの警察とプサンのスジンとは所轄も違うので、スジンが黙っていれば分からない。つまり、夫婦は人身売買の代金を払っていないとして裁判を受けている。よって罪が軽い。
ヤクザが殺害されたのは、サンヒョン達が泊まっていたホテルでは無く、ヤクザのホテル。4,000万ウォンを届けたサンヒョンが、その場で殺害。サンヒョンは「指名手配」ではなく「行方不明」扱いなのでソウル警察はサンヒョンを容疑者と特定できなかった。
ソヨンの罪は傷害致死だったが刑期途中で仮出所。ソヨンは「家族」で撮った写真を持っている。クルマの中には同じ写真が掛けてある。ドンスはソヨンに「みんなで家族になろう」と話しているので、運転手はソヨンにプロポーズしたドンス。ヘジンは未だ施設にいてヒッチハイクで逃げ出そうとしては連れ戻されているが、ソヨンの正式な刑期が終われば養父母の資格を得て養子になれる。
この時点でサンヒョンの居所は判らないが、クリーニング店はドンスが引き継いでいるので、ソンヒョンが帰る場所はある。ただしヤクザに赤ん坊の居所がしれるとマズいので、ドンスとソヨンはウソンを引き取れない。
と言う、ちょっと切ないラスト。