ブータン 山の教室のレビュー・感想・評価
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ブータンの景色には感動したが…
ブータンの美しい国土の描写は素晴らしかった。
が、ストーリーの方はありがちな展開で、深みを感じられず、期待を裏切られた。残念!
特に、最後のシドニー のシーン、「やっぱり若者は都会に出て行くのだ」って事位しか訴求してこない。
ブータンの抱える地方と、首都の格差や人々の思いの段差などをもう少し炙り出して欲しかった。
風の音を聴け
教師がサッカーの香川選手に似ていて、気を取られてしまうのには参った(笑)。
「僻地で苦闘する教師の物語」を予想していたので拍子抜けしたし、正直なところ、退屈して居眠りしてしまった。
足りないのは物質面だけで、心の面では他のどの場所よりも、やりやすかったにちがいない。
ただ、都会では落ちこぼれの若い教師が、村人に「先生」と持ち上げられて歓待されるのは、いささか滑稽だ。
「求められたから、頑張れた」というのは分かるが、キャラの造形が弱すぎる。この教師なら、それまでの4年間において「教師に向いていない」となっていたのは不自然だ。
ラストの別れのシーンの“お涙頂戴”はいただけない。
泣かせたいなら中身で泣かせなさい、というのが自分の感想だ。
この映画の主張は、おそらく牧歌的な「山の教室」を描くことそのものではなく、現代化で変わりゆくブータンの姿に対する、“時代錯誤”的とも言えるアンチテーゼではないのか?
終映後のトークによれば、首都ティンプーでは、スマホが普及し、車も一家に一台だそうだ。しかし、ルナナ村の子供は「Car」を知らないのである。
今や農業人口は5割に減少し、ホワイトカラー希望が多いという。
教師が英語の本を読み上げて、生徒が分かっているのでビックリした。
かつて教師不足のために、インドから大量に教師を呼んだ経緯で、小中高そして大学まで、英語で授業が行われているそうだ。
「ゾンカ語」という公用語をネイティブに話すのは、76万人いる国民の3割に過ぎず、英語が共通語としての機能を果たしているのかもしれない。
しかし、確固たる共通言語を持たないとすれば、一国としてのアイデンティティを維持するのは容易ではないはず。南部のネパール系住民の問題もあるようだ。
自分は全く気付かなかったが、この映画はルナナ村のようなハイランドならではの、“強い風”の音が聞こえるという。
風の音を聴け、である。
先生は未来を教えてくれる
場所を日本に替えても、僻地の若者が東京に憧れるのは同じだ。だけど、そうやって出てきた都会の生活の中でふと自分は何者であるかと振り返ることがある。(もちろん、日々の生活に流されるか、自分は都会の人間になったと勘違いしたまま振り返らない人もいるが。)
振り返ることができた人は幸せだ。たとえその感情が郷愁にも似た、ネガティブなものだとしても。そこには、形にはならない何かが存在する。迷ったり不安になったりした時に、自分の中に拠るべき何かがある。ラスト、ウゲンが歌いだしたとき、彼の胸中に去来した感情は、例えようのないそんな「何か」なのだろう。
そうやって見聞を広めた人間が、ひとつの土地(ルナナ)に根付いて生きてきた人たちと交わう。その意義を知っているからこそ、村長たちは若いウゲンにさえも敬意をもって先生と呼ぶのかもしれない。そんなルナナの人たちは「先生は未来を教えてくれる」と言う。彼らこそ、人生の生き方を身をもって教えてくれている気がした。
幸せの教科書
世界一幸せな国と言われているブータン。それは人それぞれの主観で、もっと幸せな場所は他にもあるだろう。
ただ「国民総幸福量(GNH)」を導入し数値化しようとした、その決断と思考が人の心を掴むのだと思う。
そんなブータンの実際の村を舞台に撮影された。歩いて6日間もかかる僻地中の僻地だ。
電気も通ってなく、太陽光発電も安定していない。「KITCHEN」と書かれた、土に穴を掘ったポットン便所があるぐらい。決してお世辞にも恵まれた環境とは言えない。
そういう原始的な暮らしを生理的に受け付けない人も多いだろう。特に衛生的で便利な日本に暮らしている人たちはなおさら。
でもそこには「ない」が「ある」のだ。
インターネットも届いてなくスマホもないから、暮らしにすべての神経を集中できる。流行りの丁寧な暮らしやパーマカルチャーを地で行っている。
それは生きていくために本当に必要なものが鮮明になるということ。
勉強を嫌がる先進国の子どもたちとは裏腹で、生きていくため、夢のために学びたいと目を輝かせるその村の子どもたち。
そこに望まず赴任された新米教師の心の変化で、それらの大切さを改めて痛感させられる。
目をキラキラさせるペン・ザムがかわいい。笑
そして何より景色がきれい。
学校の教材として子どもたちのみならず、大人たちにも観せたい作品。
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