「ヤク満つる」ブータン 山の教室 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
ヤク満つる
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僻地の学校がテーマと言えば、チャン・イーモウの「あの子を探して」を思い浮かべるが、あの映画と違うのは教師が都会から赴任するという点で、いくらか「田園の憂鬱」的な要素も加わってくる。
日本にもポツンと十軒家くらいの山村はあるだろうけど、さすがに行き着くのに8日もかかるところはないだろう。ブータンは九州と同じくらいの面積らしいけど、やはり世界レベルの高地ならではのことはある。画面には3人で山道を登る場面しか映っていないが、機材を抱えて同行していたスタッフたちの苦労もしのばれる。
ペム・ザム本人を演じる女の子は、「ミツバチのささやき」でアナを演じていたアナ・トレントに匹敵する逸材。ほとんど演じていないのかもしれないが、表情だけで目を引きつける。
“ヤクに捧げる歌”というのもすごい。ふだん聴いている音楽とはまるで違うが、なぜか劇中で歌われる度にぐわーっと涙がこみ上げてきた。
主人公はルナナでの数か月で本当に変わったのだろうか。映画はシドニーのライブハウスのシーンで終わるが、その後(ルナナに戻るかどうか)は明示的に描かれてはいない。ルナナにいる間は確かに人々の生活に感化されていたのだろうが、前半の自堕落で不遜な性根がそう簡単に変わるとも思えず、結局都会の生活を送るうちに「昔すごいところに飛ばされちゃってさぁ」とかエピソードトークで回想するだけに終わりそうな懸念を拭いきれない。
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