劇場公開日 2021年4月3日

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「いい涙、出ました。」ブータン 山の教室 kumiko21さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0いい涙、出ました。

2021年5月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 主人公・ウゲンが訪れたのは、筋肉質の牛みたいなヤクの恵みの下に人々の生活が営まれるパラレルワールドだった。電気は、安定的に「安定供給されない」。一口にブータンといっても、いわゆる都市部と地方(=超僻地)とではまたとんでもなく「格差がある」のであった。もちろん両者の幸せの尺度は異なる。
 一方、ブータンの人たちは全国的に自分たちが世界で一番幸せな国として知られていることを意識しているらしい。教員養成機関のスタッフは、ダメダメ教員の卵であるウゲンに、国の隅っこまで幸せにするようにと僻地への赴任をミッション。赴任先の僻地の町長は、「世界一幸せな国の若者が外国に移住しようとしている」事実を知りため息。
印象的だった人々の気質。
・他の人の決断は否定せずに尊重すること(ウゲンのおばあちゃんも、村の人たちも)。
・自分の夢や態度もはっきり言うこと。私は歌手になる、私はずっとここにいる、、、
競争なんていう概念も存在しなさそうだ。意地悪な人も基本的にいなそうだけど、離婚はあるみたいだ。
 村の人たちは、算数とか英語を教えてくれる「先生=どこにでもいそうな若者・ウゲン」を惜しみなくリスペクトしてくれていたけど、歌のうまさ、生きる知恵、親孝行、屈強な体力、自然への畏敬の念、どれをとっても村の人たちは「先生」以上だった。
まあ、ウゲンが奏でたアコースティックギターは人をつなぐ万能楽器だと再認識した。電源不要だし運送しやすいし。
 生活と伝説に基づいた、これぞ民謡、と言う歌声が本当の主役だったのかも。誰も、人よりも上手に歌おうなんてしていないのに、とても感動的なのだ。手も握らない若者二人の後ろ姿のツーショットは白眉。山と空の下、歌を教える・教わるだけの関係、眩しかった。
 そして正直言って何よりも見る者を幸せにしてくれたのは賢く健気な学級委員ペンザムちゃんの仕草と言葉、だった。ありがとう。

Kumiko21
もりのいぶきさんのコメント
2021年5月20日

kumiko21さん、お邪魔します。

>手も握らない若者二人の後ろ姿のツーショットは白眉。

肩を並べて座っている後ろ姿。
それだけなのに、 「幸福感がいっぱい漂っている」
という感じがしました。

とても好きな一コマです。

もりのいぶき