劇場公開日 2021年4月3日

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「先生は未来を教えてくれる」ブータン 山の教室 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5先生は未来を教えてくれる

2021年4月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

場所を日本に替えても、僻地の若者が東京に憧れるのは同じだ。だけど、そうやって出てきた都会の生活の中でふと自分は何者であるかと振り返ることがある。(もちろん、日々の生活に流されるか、自分は都会の人間になったと勘違いしたまま振り返らない人もいるが。)
振り返ることができた人は幸せだ。たとえその感情が郷愁にも似た、ネガティブなものだとしても。そこには、形にはならない何かが存在する。迷ったり不安になったりした時に、自分の中に拠るべき何かがある。ラスト、ウゲンが歌いだしたとき、彼の胸中に去来した感情は、例えようのないそんな「何か」なのだろう。
そうやって見聞を広めた人間が、ひとつの土地(ルナナ)に根付いて生きてきた人たちと交わう。その意義を知っているからこそ、村長たちは若いウゲンにさえも敬意をもって先生と呼ぶのかもしれない。そんなルナナの人たちは「先生は未来を教えてくれる」と言う。彼らこそ、人生の生き方を身をもって教えてくれている気がした。

栗太郎