「神と堕落と…それからほんの少しの許しと、許されない人たち」悪魔はいつもそこに クラララムボンさんの映画レビュー(感想・評価)
神と堕落と…それからほんの少しの許しと、許されない人たち
神様を信じる信心深い田舎の者たち。
冒頭の「人口は400人。何らかの理由で殆どが血縁関係にあった。人の欲か無知かはわからない」という一言で、ノッケンスティフという土地(特定の土地というよりは、アメリカにはよくある信心深い田舎の象徴なんだろうが)に宿る、圧倒的な”ろくでもなさ”を描写してしまう手際は見事。
ただし、その後の展開は少し焦点がぼやけすぎているように思う。
この物語は、全編は父ウィラードの物語、後編は息子アービンの物語になっている。
…のだけど、ウィラードのパートはもう少し短くするか、ウィラードの後にアービンの物語を始めるのではなく、同時進行させてアービンの物語と錯綜させてみても良かったと思う。
物語には神を信じていながら堕落していく人々が出てくる。というか主人公アービン以外は全員そうだ、と言っていい。
そしてアービンが一番最初に出会う「神を信じていながら、信じているからこそ堕落した人間」が父親のウィラードであり、そのウィラードの堕落は、アービンにとって最悪の「裏切り」となる。
父を失ったときに、アービンは神を失うこともなる。
正直アービンは神を信じていたらシリアルキラーになっていただろうし、そういう描写もそこかしこにあるので、彼は信じなかったことで救われたんだろう。
終盤、アービンは神と、神を信じているのに(または信じているからこそ)堕落した者たちの象徴である父親と対峙するシーン、もうすこしなんとかならなかったのか…。
アービンが下す決断にしても「うん、まあそうだろうな」くらいの感想しか抱けなかった。
ただ序盤が素晴らしかったのと同様、ラストシーンは素晴らしかった。
おそらく最後の最後に、信仰の本来の姿が提示されたのだと思う。
…と同時に、ひとつの可能性が邪心のように生まれて心配になる映画でもあった。
長々書いたけれど、物語がまとまっていく段階が個人的に「うーん…」という感じだったので★3