アンダードッグ 後編 : 特集
【期待と予想を超える】「全裸監督」に続く衝撃作!
あなたの人生に火をつける、希望と再生の人間ドラマ
森山未來、北村匠海、勝地涼が共演した映画「アンダードッグ 前編」「アンダードッグ 後編」が11月27日に同時公開される。三者三様の地獄を抱える“負け犬”たちがボクシングを通じてぶつかり合い、やがて光を見出していく姿を描く。
本作は、世界中で称賛を浴びたNetflixドラマ「全裸監督」に続く“衝撃作”だ。単なるボクシング映画ではなく、どん底の男たちが再生していく希望の人間ドラマであり、見れば「もう一回、頑張ってみるか」と奮起できるような作品なのである。
前編と後編合わせて上映時間は約4時間半。しかしその密度と濃度と面白さゆえ、長さはほとんど気にならない。多くの観客の予想と期待を軽々と超え、はるかな領域へと連れて行ってくれる。その見どころを解説していこう。
【作品概要】3人の負け犬たちがリング上で巡り会う…
題材はボクシングだけど、描かれるのは“人生の物語”
まずはどんな作品なのかをご紹介。製作陣、主役の俳優、そして物語の3つにわけて記述していく。
[製作陣がアツい]監督は「全裸監督」武正晴!脚本・足立紳との“傑作タッグ”再び
「アンダードッグ」と「全裸監督」の共通点は多い。まずメガホンをとったのは、「全裸監督」の総監督を務めた武正晴である点だ。
次に表社会から足を踏み外したが、裏社会にも落ちきれず“狭間の世界”で生きる人々を描くという点。そして前者はボクシング、後者はアダルトビデオを通じ、人間の奥底にある欲望を明らかにする点。生み出された物語の衝撃度は、それはもう半端ではない。
また、原作・脚本は足立紳。武監督と足立、そしてボクシングというと、米アカデミー賞の外国語映画賞日本代表に選出された「百円の恋」が頭に思い浮かぶだろう。同作の監督・脚本・製作陣が約6年ぶりに集い、見る者の“導火線”に激しく火をつける作品を創出したのである。アツい。
[俳優陣も激アツ]森山未來×北村匠海×勝地涼――実力派俳優が起こす、奇跡の化学反応!
「世界の中心で、愛をさけぶ」「怒り」「オルジャスの白い馬」など国内外の数々の名作に出演し、ダンサーとしても活躍する森山未來が主人公・末永晃を演じる。晃はかつてチャンピオンの座を掴みかけたものの、現在は“咬ませ犬”としてリングに上っているプロボクサーだ。
昼はボクシングで無様に負け、夜はデリヘルの運転手として働き、朝は埃っぽい布団のなかで“チャンピオンになりかけた”あの日の夢を見る。なぜ、そうまでしてボクシングにしがみつくのか? “燃えカス”の生き様を、森山がトレーナーも唖然とするほどストイックなトレーニングを経て体現した。
さらにダンスロックバンド「DISH//」のリーダーで、今最も旬な俳優でもある北村匠海が、将来を嘱望される若手ボクサー・大村龍太に扮する。なぜか晃との試合を熱望し、かすかな友情を育んでいくが、どうやら後ろ暗い過去を抱えているようで……という役どころを、北村が華々しくも影のある独特なたたずまいで表現する。
またNHK「あまちゃん」の“前髪クネ男”や、「バトル・ロワイアルII 鎮魂歌(レクイエム)」「亡国のイージス」などの勝地涼がお笑い芸人・宮木瞬役に。大物俳優の息子、いわゆる二世タレントだが、ギャグも平場のトークも冴えないヘタレ芸人という設定。番組の企画で晃と戦うことになり、瞬は本気でボクシングに打ち込んでいく。勝地のお調子者感と、一方で俳優としての真摯な姿勢が絶妙なバランスで混交している。
森山と北村と勝地が顔と拳を突き合わせたとき――得も言われぬ、奇跡の化学反応が起きる。
[予想と期待を超える]あなたの人生を底からブチ上げる、ルーザー映画の新たな金字塔
「マーちゃん。俺たちもう、終わっちゃったのかな?」「バカヤロー。まだ始まっちゃいねえよ」
北野武監督作「キッズ・リターン」のラストシーンは、公開から24年を経た現在もなお色褪せることはない。ボクシングを通じて道を違えた親友たちが自己や世界に対峙するも負け続け、それでも「まだ始まってすらいない」とつぶやくのである。
負け犬たちを描いた作品群を、ここでは“ルーザー映画”と定義する。このジャンルは傑作が多く、ほかに「ロッキー」やミッキー・ロークの熱演が胸を打つ「レスラー」など数々の名シーンが脳裏をよぎる。人生のどん底を見てなお立ち上がろうとする人々の生き様には、言葉や論理を超えた力強いドラマがこもっているものなのだ。
対して「アンダードッグ」は、スター街道を走る選手たちの影で負けて負けてそれでも戦う晃が、龍太や瞬と交わることで変化していく過程が大きな見どころに。彼らがそれぞれの理由で“勝つ”ために命をかける姿は、見る者の存在そのものを根底から揺り動かし、空高くへとブチ上げる。
ルーザー映画の新たな金字塔の誕生。劇場に入る前の予想と期待をはるかに超え、あなたの人生に大きな影響を与えるであろう一作――鑑賞すれば必ず、一歩先の未来への“希望”が見えてくる。
【見どころ】良いところがありすぎる…!
一つに絞れないから、とりあえずドバっと書いときます
ざっと作品の説明をしたが、次は中身のさらなる見どころを紹介しよう。あまりにも良いところが多すぎて、とにかく「あそこがいいよな」「ここもいいんだよ……」としみじみ語りたくなる映画だ。
○共演の女優陣がとてつもない存在感
男たちのドラマがあれば、同じ数だけ女たちのドラマもある。「喜劇 愛妻物語」(足立紳脚本・監督)での“罵倒芝居”が話題を呼んだ水川あさみが、晃の妻・佳子役に。夫と別居し愛想をつかしているが、一人息子の太郎だけは父を尊敬しているため踏ん切りがつかない、という身の処し方が難しい役どころに挑んだ。
さらに「火口のふたり」の体当たりの熱演が国内外で高い評価を得た瀧内公美が、晃が運転手を務めるデリヘル店に流れ着いた女・明美役に。若手注目株の萩原みのりは、龍太の妻であり過去を知る加奈役を担う。そして「全裸監督」(奈緒子役)でも輝きを示した冨手麻妙が、鬱屈とした日々を送る瞬が唯一心を開く恋人・愛役で参加している。
彼女らの存在が、プロデューサーの佐藤現の語る「ボクサーの物語に止まらない、日のあたらない立場を生きるあらゆる男女の群像劇」をこの上なく力強く成立させている。
○で、脇役まで最高で“好き”になる
脇役がメインキャラクターを“食う”ほどのインパクトを残していることも、鑑賞していて「この映画、良い……!」とため息をつくポイントだ。
まず瞬のトレーナーが印象的。お笑いトリオ「ロバート」の山本博(プロボクサー&トレーナーでもある)が演じており、彼が瞬とスパーリングし、芸人としてもボクサーとしても半端であると罵倒するシークエンスは非常にグッとくる。
そして晃とは腐れ縁の仲であるデリヘル店の店長・木田はあまりにも強烈。演じたのは映画監督・二ノ宮隆太郎、「全裸監督」では古谷(國村隼)の子分で、悲壮な最期を遂げるチンピラ役を熱演したあの人だ。口調は大袈裟なほどに吃り、顔面は麻痺したようにピクピクと動き、ひと目で“異質”だとわかる木田。しかし発言の端々から晃を慮っていることがにじみ、時間を追うごとに「こいついいヤツだな~……」と好きになってしまう。
ほかにもデリヘル嬢の明美を度々指名する車椅子の男・田淵玄(上杉柊平)や、晃の父・作郎(柄本明)、木田と店を支えるベテランデリヘル嬢・兼子(熊谷真実)らも記憶にこびりつく。主役ではなく、むしろ脇役が作品の核心となるセリフを吐く、そんな足立脚本の妙を堪能してもらいたい。
○とはいえボクシング描写がすごい迫力でやばい
ここまで人間ドラマとしての側面を強調してきたが、ボクシング描写も秀逸。前編のラスト、そして後編のラストにそれぞれ“ビッグマッチ”が用意されているが、そのクオリティは間違いなく日本のボクシング映画におけるトップ・オブ・トップだと確信できる。
撮影はボクシングの聖地・後楽園ホールで行われ、森山、北村、勝地が芝居を超えた“本気”で対峙する。リング上で行われるのは単なる試合ではなく、ましてや殴り合いでもなく、男と男の対話。世界中を見渡しても、これほど真に迫ったボクシング描写は稀だと言える。
撮影前から長期に渡るボクシング指導を担ったのは、「百円の恋」「あゝ、荒野」などにも参加した松浦慎一郎。佐藤現プロデューサーは「真っ先にスケジュール確認した1人が、松浦さん」と語っており、その手腕と実績は業界内でも突出している。
ちなみに松浦は俳優としての顔も持っており、劇中では龍太のトレーナーに扮した。彼の指導と芝居(ふとした瞬間の発言など)がボクシング描写に事件的なリアリティを付与している。日本でボクシングを題材にした傑作が連発される理由は松浦の存在にあり、そう断言できるほど重要な人物である。
○上映時間は合計4時間半だけど、体感は1時間59分くらい
監督・脚本、主演俳優陣、物語、女優陣、脇役たち、ボクシング描写……。さらにさらに脚本・足立が刻み込んだ魂の名ゼリフがのべつ幕なしに飛び出してくるのだから、感情はもう息つく暇もない。
上映時間は前後編合わせると約4時間30分。しかしその密度ゆえ、鑑賞中の筆者の思考に「長いな」というダレ感が入りこむ余地はなく、なんなら体感では1時間59分くらいの映画に思えた。前後編は同時に公開を迎えるので、チケットを予約する際は、ぜひとも日にちをあけず連続で鑑賞してもらいたい。
でも、劇場版の上映館はわずか ぜひ応援を…!
あと“本編見たら絶対見たくなる”配信版も始まるよ!
本作は前後編の“劇場版”と並行して、ABEMAで配信される“配信版”(全8話)が制作。実は映画業界の慣例から、配信が決まっているとほとんどのシネコンが当該作品の上映を回避するため、この劇場版を見られる映画館はごくわずかという状況になってしまっている。
しかし本作、何が何でも映画館で見てほしい一作だ。お近くの劇場に「『アンダードッグ』前後編を見たい!」とリクエストを出したり、鑑賞できた人は感想をSNSなどでつぶやいたり、応援を重ねれば状況は変わるかもしれない。
なお配信版は晃ら3人のほか、彼らを取り巻く人々にスポットを当てている。劇場版では描かれなかったディテール(例えば木田や脇役たちのさらなる物語など)が盛り込まれているため、前後編の鑑賞直後、絶対に「配信版も見たい!」となるはずだ。
劇場版「アンダードッグ」は、11月27日より【前編】【後編】がホワイトシネクイントほか全国順次公開
配信版「アンダードッグ」は、2021年1月1日よりABEMAプレミアムにて独占配信開始