「Standing and Fight !」アンダードッグ 後編 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
Standing and Fight !
箕島ジムのかもいに貼られていた、薄汚れたヨレヨレの横断幕に書かれていた一文。結局、これですよね。
前後編、合計276分。4時間36分の長丁場ですが、全く飽きずに一気に観れました。監督は「ホテルローヤル」「銃/銃2020」「嘘八百シリーズ」「百円の恋」の武正晴さん。原作・脚本は「喜劇 愛妻物語」「嘘八百」「志乃ちゃんは~」「百円の恋」の足立紳さん。まぁ、コンビですわねぇ。大好きです。
役者さん方も、俺的には超豪華キャストですからw
諦めの悪い意気地のない男がドはまりの森山未來。北村匠海君、過去最高作って言っていいくらいにカッコええです。勝地涼も持って行きます。瀧内公美のエロさは既に安定域。荻原みのりも堂々としてます。冨手麻妙が久しぶりに可愛いし。ダメなダンナを持つ女房役と言えば、もう水川あさみです。止めが、新津ちせお嬢様。今回ははしゃぎまくりません、走り回りません。
その他の男性陣もちゃんと一人一人が立ってます。さすがに276分も掛けてじっくり撮ってますから、無駄遣い感が無いw
素人に毛の生えた程度の、半アマボクサーすらKOできないほどに落ちぶれた、元日本ランク1位の男。みじめと言う言葉以外の形容詞が見つからないほどの、みじめっぷりは、勤め先のデリヘル運転手生活、老父との同居の汚れっぷり、別居中の息子との対面、等々でこれでもかと言うほどに詳細に描写されます。
ここが、ある意味、ボクサー映画の基本文法。
前編では、何かを変えたい崖っぷち芸人が必死にもがく様を、落ちぶれボクサーにぶつけて来ます。勝地涼が全部かっさらって行って終了。
後編に向けては、ボクサーとして切れっ切れで乗りに乗ってる北村匠海と落ちぶれボクサーの勝負が、どんなな成り行きで実現するの?が謎として残りますが、まぁ、ええ具合に順風満帆だった匠海君の生活が、大暗転。落ちぶれボクサーの方はと言うと、更に転落。
ボクサーとしての未来を捨てる覚悟を決めた若者と、ただただどん底の生活で生き様を変える気力さえ完全消失した男が、8回戦の一試合のために立ち上がる。
これ、完全にボクサー映画の文法の忠実な展開。分かっちゃーいるんですけどね、ほんま、ボクシングは男のロマンだすw
自分を追い込み、痛めつけ、研ぎ澄ましていくトレーニング場面。ボクシング映画の見どころですが、減量・計量場面がありません。落ちぶれボクサーの方は、ストーブ焚きながらスーツでシャドーやりますが。これが、二人の、各々の朝食場面で、匠海君がみそ汁の具をつまみながら「染みわたってるよ」と口にする場面で、「あ。試合は今日なんだ」って判ります。この時のワクワク感。このトレーニングからの流れの演出、と言うか脚本が好き。
8回戦の24分は、ボクシング映画の醍醐味に御座います。関係者の想いが交錯するリングの上で。最後は、ただただ殴り合うだけの2人。明日のジョー&ロッキーのムネアツワールド。
ボクシングの道へ進むきっかけを作った男を、この手でリングに沈める事で、ボクシングへの想いを断ち切ろうとした若者。
「世界チャンピオンなんかにゃ成れっこない」と言う現実を受け入れられないだけの意気地なし。
試合後の、各々の生き方が、綺麗ごと過ぎない感じがして好きです。
良かった。とっても!