「岡田准一の拡張物語」ザ・ファブル 殺さない殺し屋 Chuck Finleyさんの映画レビュー(感想・評価)
岡田准一の拡張物語
岡田准一は以前から大活躍の役者さんでしたが、ここ数年の自己バージョンアップへの精進は大したもんですね。全体として前作より明らかにパワーアップしました。
今作では、主演のコミカル演技ぶりはまあもっと脚本・演出が彼向きに合わせろよ、元々コメディアンじゃないんだからと思いましたが、アクションシーンはハリウッドや香港映画、もちろん邦画一般のそれとは組み方や進行を変えパワフルな独自性を出しています。
たぶんそれは単に役者の身体能力や、思いつきで画に現れるものでなく、大変な創意工夫と役者(ダブルも?)の別途の努力で初めて見えるものではと思えたので大したもんです。一方で木村文乃や佐藤二朗もよく脇を固めてます。
ただ偉そうに言いたいのではないのですが、
往々にして邦画は最初に発案した「こだわりの設定」に頼りすぎ、また脚本を書く前から決め切っていたかの如き「驚きの結末」シーンに拘りすぎ、
肝心のストーリー展開の脚本と撮影が弱々しくチグハグで、全体として見た目ショボい and/or 都合よい進行+取って付けたようなあっけないか意味不明のエンディング、
といった残念作になることがとても多いような気がします。この映画も、中盤〜終盤にかけて危うい進行・映像になりかかっています。
これは役者の演技力や見た目でしのぐべき話ではなく、監督・脚本・撮影の製作側が、もっと緻密で観客の視点に立った話し作りをして欲しいと思います。
陽気に海を越えてやって来るハリウッドや、TV番組は果てしなくダサイが何故かマジな映画は違う香港、最後はとにかく悪を倒して皆で踊ればOK!なインドでも、それぞれ1〜1.5流映画では脚本や撮影が殆どの日本映画よりしっかりしています。
残念なことに日本では、この作品でもそうですが、そういったあやふや・あいまいな物語進行部分をベテラン俳優(本作では佐藤浩市、最近彼はそんな役回りが多い。サイレント・トーキョーとか酷かった‥)の情感的演技や悪役への奇抜な演出で乗り越えようとするものが多い…。
ただ本作は、製作者自慰的な重すぎテーマ描写に偏らず、また岡田准一の演技が非常に明瞭で場面の意味不明化を防いでいるので、それほど気が逸れず最後まで観られました。重ねて大したものです。
次作や主演の同ジャンル映画が創られればまたぜひ観たいと思いました。