劇場公開日 2021年7月31日

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「何かを失うときは、何かを得るとき」8時15分 ヒロシマ 父から娘へ bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0何かを失うときは、何かを得るとき

2020年8月19日
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鑑賞方法:映画館

昭和20年8月6日、19歳だった美甘進示さんは爆心地から800mほどの上柳町(今の幟町付近)の自宅で被爆。地獄絵の街を歩き、栄橋から東照宮、また自宅。避難所となった府中中学校で生き別れたお父様は亡くなったと思われ。原爆症に苦しみながらも回復した進示さんは、自宅の焼け跡からお父様の形見の懐中時計を掘り出す。8時15分は、破壊され歪んでしまった文字盤に焼き付いた二つの針の影が示す、惨劇の証拠。

この時計は、原爆の悲惨さを訴える目的で、1983年、NYの国連本部にケースに入れられて展示されます。89年、国連本部を訪れた美甘章子さんは、その時計が無くなっていることに気づきます。こともあろうに。国連本部での盗難。

この報を受けた美甘進示さんの言葉がすごいんです。「失うことで得られるものがある」。その言葉通り。時計の盗難を新聞報道で知った旧知の仲間や親族が、美甘さんの生存を知り連絡を取って来て、旧友復活。美甘さんは、焼失した家系図を15代前まで遡って復活させることもできました。

アメリカを憎まず。原爆を憎まず。国を憎まず。誰をにも憎悪することなく。全てを赦し、ただただ、自分の人生を生き抜いた美甘進示さんの言葉は、一点の曇りもない信念にあふれてて。

美甘さんは、その後、同じ被爆者である奥様と結婚。原作「8時15分:ヒロシマで生き抜いて許す心」の作者である美甘章子さんは、進示さんの次女。進示さんは、このドキュメンタリーが完成した2020年2月時点でご存命との事。いつまでもお元気で。

今年も、広島の慰霊式典には、黙とうする気も無く、爆騒音で人を罵り喚きたてるだけの集団が押し寄せて来ました。もう来ないでくれるかなぁ。私たちは、心底、迷惑しています。

そもそも。

二度と失わないための行動を起こす場所は、ここじゃないでしょ?

bloodtrail