劇場公開日 2020年12月25日

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「吉沢亮のヤバいヲタク演技が素晴らしい!!」AWAKE バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0吉沢亮のヤバいヲタク演技が素晴らしい!!

2020年12月29日
PCから投稿

全く期待していなかったのだが、年末ギリギリで、邦画の中では上位クラスの映画が滑り込んできた。

スポーツもそうだけど、将棋とか囲碁とかチェスとか…ルールがわからない人が観ても楽しめるようになっていたとしたら、合格といえるだろう。今作も将棋のルールが全くわからなくても緊張感はかなり伝わってくる。

学校や地域の将棋クラブなんかでは、圧倒的な天才とされていても、専門の場所へ行けば、その中のひとりでしかないというのは、美術やスポーツなど様々なジャンルにあてはまるし、その中で自分の才能に挫折し、葛藤するというのは王道である。

一握りの人間の中で、更に一握りの人間だけが次のステージを進んでいくという、広いようで狭い世界。今までは、その中で勝ち抜く者たちの作品や、逆にどん底に落ちるといったテイストの作品が多かったが、近年増えてきたのが、別方向からのアプローチ。2番手、3番手の生き方である。

つまり、夢の選択肢はひとつではないということだ。

今作の主人公もプロ棋士になるという夢は砕かれてしまったが、別方向からのアプローチとして、AI将棋プログラムを開発し、結果的に自分のライバルと対決することになるのだ。他にもプロにはなれなかったが、新聞記者として将棋欄を担当する者もいたりと、自分の好きなこと、得意なことを追いかければ、正面は無理でも別方向からアプローチが可能ということを提示してみせているのだ。

将棋どうこうということは、置いといたとしても、夢破れても、自分の力や可能性を信じ、新たな夢を見つけ出す過程を描いたサクセス・ストーリーとしての部分が色濃く描かれている作品としては、かなり見応えがある。

何より素晴らしいのが、吉沢亮のヤバいヲタク演技である。今までヲタク役を数こなしてきたようなハイクオリティ演技であるし、この人ならパソコンとかも得意そうだな…と思わせてしまう。これが上手くいってないと、プログラミングを覚えていく過程にも説得力を持たせることができないが、吉沢亮は完璧である。しかし、今後もヲタク役が連発しないかという心配も残ってしまう。それぐらい必見の価値があるというか、吉沢亮の演技だけでも観るべき映画といえるだろう。

またライバルのプロ棋士も、さわやかキャラじゃないところが良い。子供の頃は、社交的にみえたのだが、大人になるにつれ、少し暗い雰囲気になっている。メガネ率も多いし、服装も地味になっていく…将棋とは限らないが何かにのめり込んでいくと、外部との接点が遮られて、光が奪われていくという代償があるとも感じさせられたのだが、口数が少ない者同士の友情という点でも良く描かれいた。

わかりやすく相手を励ましたり、褒めるようなことはしないで、ただ目線を通わせ、ぽつりと一言。

互いに意識し合っていて、何なら大親友になれたかもしれなかったのに、不器用さが故に、一定の距離を超えられない。しかし、その距離の間には、実は友情や尊敬というものが確実に存在しているのだ。

バフィー吉川(Buffys Movie)