劇場公開日 2021年6月25日

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「コピーで良いんだ」いとみち HammondJ3さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0コピーで良いんだ

2021年8月13日
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鑑賞方法:映画館

この映画のリズムが、個人的にとにかくツボです。
クスっと笑えるポイントが散りばめられていたり、津軽地方の風景がバックで映えたりと、沖田修也監督の作品を観ている感覚でした。主人公の家庭といい、メイド喫茶の職場の人間関係といい、独特な居心地良さが感じられます。

観てから1日経って、この作品のテーマが分かってきたのですが、文化でも芸術でもコピーすること自体は、全く恥ることでもなんでもなく、そこから新しいことが生まれて、継がれていくものもあるのだな、と気が付かされました。
メイド喫茶のオーナーが「オリジナルなんてない、全部コピーだ(うろ覚え)」と豪語していましたが、あれは否定ではなくて何かを始めようとする人へのエールとも聞き取れます。

この映画の中では、2つの事象についてコピーがされていて、1つが「メイド」という文化、もう1つが津軽三味線という文化でした。
「メイド」の文化は、東京からやってきて青森という地で根付こうとしているところ、そして津軽三味線は、青森という地で脈々と、見て聞いて(耳コピ)継がれてきた文化。
その対比も面白いのですが、どちらとも(映画の中では)途絶えそうな危機を向かえる中で、また新しい魅力の発信へと昇華していく流れが、奥深いテーマなのでは、と勝手に読み取りました。

たまたま観賞した翌日に、企画展で俵屋宗達と尾形光琳の両者の描いた「風神雷神図屏風」という作品について知る機会がありました。
オリジナルは、俵屋宗達なのですが、尾形光琳は宗達の作品を上からなぞる(それこそコピーする)ことで、そこに色使いなどの光琳独自のエッセンスを加えていき、
宗達の技術を真似ながら自身のオリジナリティを加えることで、琳派が誕生したそうです。

そんなことに気が付けたこともあり、この作品すごいんじゃないかと思っています。

あと、メイド服が最初はただの制服だったのが、映画の終盤ではユニフォーム(スポーツ選手のそれ)に見えて、非常にカッコよく見えるのも印象的でした。

HammondJ3