完全なる飼育 etudeのレビュー・感想・評価
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台本に書かれた思い、願い、世界。それを読み取れなければ私は許さない。
この作品はシリーズものの一遍だったらしいのですが、全くの予備知識なしでの鑑賞でした。
コンプライアンス違反にうるさい昨今の制作現場ではあり得ない舞台製作現場だと思います。セクハラ・パワハラに関してはどの現場でもピリピリしていて、オーディション情報の際には制作側から「当現場はコンプライアンスを遵守します」等の誓約の記されたものがほとんどだと聞いた事があります。というのもそれまでの現場で相当の事が行われていた事もあるようで、映画でも映画出演を条件に監督が女優に性的虐待を起こして映画界から追放されたニュースも拝見しました。才能のある方だと感じていたので、残念になりません。
性的な事ではなく、絶対的な演出家とそれに従じる俳優たちのやりとりが黒澤明、溝口健二などの監督。久世光彦、深町幸男などのテレビディレクター。蜷川幸雄、つかこうへいなどの舞台演出家の厳しさはいまだに語り継がれます。虚構の物語を実際の人間が表現する作品作りにとっては、演出家の絶対的なイメージとそれをどう演じていくのかという俳優との闘いになると思います。それでも映画は映倫、ドラマは放送コードなどもあったりスポンサーとプロデューサーなど様々な人の意見が入る事により、演出家だけの世界になる事は少ないと思いますが、演劇しいう世界は作・演出が同一人物で会った時には特にその演出家の意見が絶対的なものになります。
今回のストーリーも「完全なる飼育」という舞台を制作するバックステージものの作品の為、作・演出家である小泉彩乃(月船さらら)の世界観をいかに具象化していくかのストーリーです。かなり強引な演出で主演の俳優が降板してしまい、そこに舞台のオーディションを受けたいとやって来る新人俳優の篠田蒼(市川知宏)のやりとりです。
公演を2日後に控えて主演が降りて、公演が出来なくなるという情報をどうして知ったのかとか、舞台は動員か不可欠なものであるので作演出の名前だけでクリアになるのかなど制作側の不可思議さはありますが、それは作品の流れで良しとしましょう。
その後篠田の本気さを感じた小泉は篠田で作品作りを進めようとしますが、実際の篠田の芝居は本気さが感じられず、次第に狂気の演出になっていきます。
ここでのダメ出しは次第に精神的にも肉体的にも凌辱され、小泉の演出を受けざるを得ない状況に追い込められていきます。これが次第にエスカレートしていき限界までに達した時、その関係性が逆転されます。篠田は以前恋人が小泉の演出に耐えかねて自殺していたのです。その復讐のために小泉に近付いていた篠田ですが、次第に小泉も孤独の中での表現に苦しんでいて、役者に自分の意志を伝える事で表現しようとしていたものだと気が付きます。
篠田は小泉を許し、最後には二人で舞台を演じ切るのでした。
という感じだと思うのですが、いかがでしょうか。
演劇という特異な空間での作品ですし、現実と劇中の芝居の交差部分でわかりづらくなっていますが、演出家の無茶ぶりにどう対応していくのかが一つの見せ場になっています。
小泉役の月船さららさんは宝塚出身の方なんですね。大胆な芝居をしていたりフルヌードにもなっていたので、宝塚出身とは思わなかったです。
ウィキペディアを見ましたら全篇台湾ロケとの事でしたが、ほとんどが劇場内の展開なので国内でも十分対応出来たのかと思います。台湾ロケにした理由は何だったのでしょうか。
「なんかなぁ~、どんどん遠ざかっていくなぁ~」
タイトルは「完全なる飼育」やけど、原作から遠ざかりすぎて直視出来ない、ってのが正直な感想。
しっかり観てたわけやないが(てか、しっかり観る程の価値がないと、初期の段階で思った)、「飼育」という言葉を良いことに男女が痛めつけ合う。
なんや、この映画????
「完全なる飼育」をライフワークとしている竹中直人も、さぞや嘆いているやろうと思ったら、しっかり出演していてびっくり。
彼も、このシリーズに出演できるなら、ストーリーがどう捻じ曲げられたとしても気にしないのね。
オリジナルを読み、それを再現していた初期の頃のシリーズを知ってる者としては、前述の最初の2行がすべて。
もちろん、再度テレビで放送されてても、観るはずもない。
私の中にある『飼育』とは相入れなかった
和田勉監督、新藤兼人脚本による1999年の第1作から数え、今作でシリーズ第9作になるとのこと。社会派の巨匠・新藤兼人が中年男と女子高生の歪んだ純愛を嬉々として描く姿を想像して楽しむのも映画好きの一興だった。
路線を変えた本作。自分には合わなかったなぁ。評点が低いのは嗜好の問題であり申し訳ない。
役者を追い込む実にサディスティックなスタイルの女性演出家と公演直前に降りた役者の代わりにオーディションに来た若い男のお話。なのでシリーズとしては番外編と言って良いかと。
いくらドMな私でも納得しかねる度を超えた追い込み。二人の関係性を逆転させる狙いもわからないではないが、私の中にある『飼育』とは相入れなかった。
唯一、第1作の主役を演じ、以降脇にまわり今シリーズに顔を出してきた竹中直人さんのコミカルな演技を楽しんだ。
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