「『異端の鳥』と合わせて観たい映画」アーニャは、きっと来る あっちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
『異端の鳥』と合わせて観たい映画
最近、少年の目を通してホロコーストを描く映画が増えています。『ジョジョ・ラビット』、『異端の鳥』、そして本作です。
その中でも、本作と『異端の鳥』は、かなり対照的な作品だといえます。同じ時代(第2次世界大戦下)のヨーロッパの農村を舞台にしながら、『異端の鳥』は絶望の世界を、本作は希望の世界を描いています。個人的には、『異端の鳥』を観て荒んだ気持ちが、本作で癒されました(とはいえ、両方共に観て、よかったとも思っています)。
本作では、大人ではなく、少年を主人公にすることで、ドイツ人を絶対な悪として描きません。
前の大戦でドイツと戦った祖父、ドイツの収容所で強制労働をさせられた父は、はなからドイツ人は敵でした。一方で、子どもであるジョーは、娘を心配するユダヤ人のベンジャミンとも、空襲で娘を失ったドイツ人伍長とも、心を触れ合います。ちょっとした出来事ですが、この伍長との触れ合いが後の結果に、大きく影響したと、私は感じました。
ホロコーストの虐殺場面を直接描いた作品に比べると、衝撃の度合いは低いものの、戦争の不条理性を深く考えさせられた映画でした。クライマックスでの美しい山々の風景も含め、お勧めの映画です。
ちなみに、村人の会話が英語で話されていたことが残念だという意見があるようです。80年前のフランス南部ですので、村人の会話は、本来はオック語(プロヴァンス語)である可能性があります。「政治的にフランス語の方言」とされてきたオック語ですが、フランス語で代用すれば傷つく人たちもいると思います。そう考えると、私は、英語で代用することも、しょうがないかなと思いました。