「題材はすばらしいけど、映画の評価はまた別」アーニャは、きっと来る ピラルクさんの映画レビュー(感想・評価)
題材はすばらしいけど、映画の評価はまた別
『シンドラーのリスト』に代表されるユダヤ人救出の物語です。援けることに報酬はなく、ましてや他国の人であり、そしてリスクは自身の安全を引き換えにするほどの大きさ。フランスの田舎の町で数人のユダヤの子供たちをかくまい、山越えさせてスペインへ逃れさせれる計画を描きます。
救う命は数人で、何千人の命を救ったというスケールはありませんが、この逃亡ルートはあちこちであったらしく、総数で救われた命はかなりの数になるらしい。
ハリウッド方面では、地球を救うとか、人類滅亡を食い止めるとか、救出スケールは行きつくところまでいってます。救出物語の感動は救出した命の数に比例すると言わんばかりですが、そうじゃないよと気づかせてくれることがこの映画の一番よいところかもしれません。
目前の真に困っている人を助ける行為は、その困窮の度合い、対象とする人の数にかかわらず、世界を救うほどの価値がある、と信じて行動するばよいと学びとりたい。
ということで、映画の取り上げている題材はすばらしいのですが、だからと言って、この映画はすばらしいとは私は評価できません。麻薬とギャングと暴力の映画だからといって、酷い映画にはならないように。
登場人物にたいして奥行がなく、人と人とのつながりも分かりにくく、歴史も文化も背景も状況も説明するまでもないとゆだね型で、そういう作風といってしまえばそれまでですけど、全体的に誰もが固い表情と無口な行為で、はっきり言って私が期待しすぎました。
内容紹介の文章を読んで、直感でこれはおもしろいと判断したのですが、観たあとでは、『なんですか、あの内容紹介の仕事は。博報堂ですか。さすが、広告屋さん。しかし、上手というよりも……。』今度からこのブランドには注意しよ、と思いました。
それとは別に役者について。ドイツ側のトーマス・クレッチマン、トーマス・レマルキス、どちらもいい味出してますね。こんなデキそうな人達が僻地の警備役にまわされるのも違和感大有りなほどに(笑)。