「ナチス将校のパワハラ」アーニャは、きっと来る グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
ナチス将校のパワハラ
ナチによる迫害。
それを背景とした逆境の中で発揮される人間性の気高さには、素直に感動します。
一方で、ナチに加担してしまう弱さや脆さ(弱い人間である私にはそれを〝人間の醜さ〟と断じることはとてもできません)を抱えた人たちは、この映画には出てきません。なので、後ろめたさに通ずるような〝重さ〟を殆ど感じることなく、全体的な印象としては牧歌的とも言える長閑さの中でのさまざまな葛藤についての物語として、目を背けることなく作品世界に入り込めます。
ナチを題材にした多くの映画に付きものの〝残忍さ〟や〝悲惨さ〟というバイアスを排除することで、戦争という極限状態ではない日常における人としてのあり方を問うことに成功していると感じました。
(余談)
前述したような〝人のあり方〟という視点で見ると、ナチの将校は、究極のパワハラです。伍長は別とした今までの多くの事例から。
処刑(会社でいえば、人事面での処遇やチーム内でのランク付け)のように生々しくて取り返しのつかないような近未来をちらつかせて人を脅しつける狡猾さ。
恐怖でおどおどしてる相手を見るのを楽しむ、という歪んだ嗜好。
収容所で実際に行われていることの実態をどこまで知っているかということとは関わりなく、地位や立場を守ったり誇示したりするという、なんともつまらない動機が人間をいかに〝人でなし〟にしてしまうことか、被害者側の心情を考えるととても重苦しく嫌な気持ちになります。
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