ノマドランドのレビュー・感想・評価
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ナレーションのかわりに流れるピアノ旋律が心に響く
本編を通じて伝わってくるファーンの生き方や考え方に徐々に共鳴し、ノマドという生き方に憧れさえ抱いてしまった。フランシス・マクドーマンドの演技力には圧倒される。実在するノマドの一人を追いかけているドキュメンタリー映画にしか感じない。
ノマド的ライフスタイルのいいところだけを切り取って映像にはしていない。高齢者には過酷な肉体労働、ついて回る病気、金欠、排泄物の処理までも隠すことなく描かれている。
積極的な理由でノマドになった人たちは、ほとんどいない。公的年金だけでは、家賃を払うことすらおぼつかない。ホームを家から大型ワゴン車やキャンピングカーに変えることによって家賃から解放され、経済的な自立が可能となる。その代償として、季節に応じて非正規の職場を何千キロも移動する渡り鳥のような生活が待っている。しかも過酷な肉体労働しかない。
ノマド的ライフスタイルを新しい自立と肯定的に捉えることはさすがに自分にはできない。行きすぎた自由主義経済からこぼれ落ちた人達が、生きる目的を必死で探した結果だと思う。それであっても良き労働者、良き隣人であり、助け合って生活するノマドの生き方には感動すらする。
ただ、橘玲氏が指摘しているようにノマドとして生活できるのは、白人にだけ許された特権であることも見過ごせない。有色人種が禁じられた場所で車中泊をすれば、あっという間に逮捕されてしまうからだ。
いろいろな問題を含んでいるとはいえ、映画としては秀逸で、ナレーションのかわりに流れるピアノ旋律がノマド達の心情を語っているように感じる。
HOME is just a word. 旅人あるある。
どれぐらいの人が人生に完璧を感じる瞬間ってあるのでしょうか?もうここで人生終わっても良いと感じる瞬間。本作で言うとスワンキーが感じた瞬間。個人的には昔タスマニア島の更に離島のマリア島で、本当に人間が一人もいない状況で、小高い丘に登って島を見渡した時に「なんて世界は完璧に作られているんだ」っと感じた事があります。言葉にすると陳腐化するのですが、「神様は本当にいるかもしれない」っと思った瞬間。そして、とても人生に満足して今終わっても惜しくないと思えた瞬間でした。まー、実際は人生そこで終わる事もなく今もダラダラと生き続けているんですけど。
そんな事を思い出した「ノマドランド」です。昔バックパッカーをやってた自分から観れば旅人あるあるでした。実際に5ヶ月程ノマド的生活をしながら撮影したみたいで、旅人の感覚が何となくフィルムに収めてあり、共感できる部分もありました。登場している人が本物の「ノマド」なので、話す内容にもリアリティーがあります。人が話をしている時にはアップになってたりとドキュメンタリーに近い手法で珍しい作り方ですね。
旅をしてお金がなくなったら働いてまた旅をしてって生活。そういう時に感じる物事って言葉にするのが難しいんですよね。自分は昔あっち側の人間だったので、逆にやった事がない人からみればあの生活ってどう写るんだろうって不思議に思いました。
海外でバックパッカーだったあの頃に比べると今日本で定住している会社員の生活は確実に不自由がない。でも、不自由な時の方が満たされていたのでは?っと思う時もあり・・・。結局人間って何処までいっても無い物ねだりなんだよなぁっと思ってしまう「ノマドランド」でした。
ここに幸あり♪
砂漠と海と老人たち
とても好きな映画。今のところ今年の一番かな。うっすらした老年のロマンスはあるものの、それ以外に物語はほとんど無いに等しい。それなのに美しいレイアウト・映像と語り過ぎない演出、必要十分なモンタージュで興味を散逸させない。後半に映る荒れた海がずっと続く内陸の風景の後で印象に残った。
登場するノマドたちはほとんどが高齢者だ。うまく説明できないが、50代半ばになった自分には納得する要素がある。主人公を含め、ノマドという生き方を選択をするにあたっては、もちろん金銭的な要素が大きいと思うが、「残された時間をどう生きるか」という問題が強く影響していると思うのだ。
この中国出身の監督がこんどMCUを撮ることになったとは事前に聞いていたので、映画館の看板にアベンジャーズが出てきたときはちょっと(かなり)微妙な気分になった。映画を見た後で宣伝の意図ではないとする記事を読んだ。たとえそうでなかったとしても、そのように勘繰られる要素はこの傑作映画に不要だ。正直省いてほしかった。
旅というものの魅力
フランシス・マクドーマンドが凄すぎます
見終わって数時間たちますが、
まだまだ映画の中に入り込んで抜け出せていません。
誰もがきっと、自分の人生や心の内といくらか重ね合わせて、主人公と現実の自分とを行ったり来たりしながら、気がついたら映画の世界にどっぷり浸っていた、
素直にそう思わせてくれた秀作です。
ノマドランド
癒しの旅
定住しない生き方を選択する動機は、ただいろんな場所で生活することが楽しいからなのかもしれないが、この映画に出てくる人々は、あまり楽しそうではない。
逆にいろんな事情を抱えて生きることが苦しそうに見える。
自分は、本作の定住しない生き方は、癒しの旅、もしくは巡礼なのだと思った。
生きていく上で心の傷を負うことは多い。年を取るほどに取り返しのつかないことも増え、静かな絶望の中で生きる人も少なくない。
そうした痛みを抱えながらも、自然の中に身を置き、清浄な水に浸かることで心身が浄化されていく。
また同じような境遇に身を置く人々と交流することで、まるでセラピーのグループワークのように心が解きほぐれていく。
癒しの旅は、自分の内面の闇と対峙する孤独なプロセスなのだ。
そうした巡礼を経ていくことで家族との関係、交流する人々との関係が見直され、人と人が助け合って生きていくことの重要さを再確認する。
フランシス・マクドーマンドの演技が超絶素晴らしい。
この人の佇まいの説得力は尋常じゃない。
それと撮影の美しさと音楽。
とても地味な内容の作品で暗くなりがちな脚本なのだけど、それを格調高い作品に昇華させている。
若干、地味すぎ、暗すぎ感は否めないのだけど、大人の映画ファンを納得させる渋い作品でした。
ハウスレスだ!
綺麗に共感しちゃダメダメ
これは悩ましい、痛いところグリグリ突いてる
何にも邪魔されないノマドという生きかた、ホームレスではなくハウスレス、っていう世界観
でも結局のところそんなんは自尊心のあやが捻れて表出したに過ぎない、素でみれば自明だけど、みんな実質ホームレス
大半の人のプライドや誇りは慈愛の援助を無遠慮に受けられるほど低くないから、ついつい、"ノマド" やりたくてやってるって化粧しちゃう、そしてそんな認知的な不調和が、もう周りには拾えない感じで噴き出しちゃう
自由を謳歌する気持ちと将来を不安視する気持ちとがあったとして、みんな歳とるからだんだん不安が大きくなるのは当たり前、そうすると、うっかり安らかな自死を願うようになる、ただでさえ社会が付いていけないテーマを、その今のかりそめの先に求めるのか?
Dedicated to the ones who had to depart
エンドロールの最後にこんな文章が出てくる、Have toの構文が入ってるのが大事なんだと思う、心からノマドをありだと評価しているなら、ノマドに何か希望を見ているなら、had toっていう、この二つの単語は入らないはずだよ
妙に刺さりました
若者には退屈な映画かもしれないが・・
内容・質ともに文句のつけようが─
映画って何なんだろうってあまり考えないし、そんな徒労したくないけれど、この作品を見ていると、映画って楽しんだり感情を動かすことももちろんのこと、学びでもあるんだなぁと実感してしまいました。
真似るとか暗記するとか身につけるとかとは違った、学び?感化されるとか、ふるえあがる、何かをしたくなるというもの。
何か突き動かされるような感覚になるような気がしました。
今のアメリカ、アメリカそのもの、のみならず、現代社会の実状、将来、生き方、人生・・・
知ったところでどうこうなるものでもないし、記憶していたところで役に立つかどうか分からないけれど、この作品を見たことによる影響は自分の中で確実にあるような気がしています。
そんな小難しいことなどありつつ、さらに単純に楽しめるし、質の良い映像と音楽で感情が刺激され、感動的な作品でした。
どうしてもスリー・ビルボードと比較してしまいますが、そうすることで一層マクドーマンドの凄さ素晴らしさ魅力が実感できるのではないでしょうか?
広大なアメリカの大地とは対照的に小さな存在として描かれているファーン、しかしながら力強い山々や荒涼とした地平線に決して負けないものがありました。マクドーマンドでなければ成立しなかったかもと思うのは大げさでしょうか─。
少ない台詞、断片的な描き方なのに、内容が非常に分かりやすくて、驚愕してしまいます。説明など皆無なのに、内容がよく分かる。テーマが重いし難しいので、この分かりやすさは実に有り難くて、だからこそ感動してしまいます。
一言でノマドというものを語り尽くせないところもにじみ出ていたし、ホント静寂続きで飽きそうなんだけど、ずっと引きつけられたし、とにかくモンスター級の映画だったという印象です。
自分の人生を生きている人たち
それでも自由を選ぶのか!
映像美とマクドーマンドは素晴らしかったが…
『夏時間』『ミナリ』に続いて、3作品連続でアジア系監督作品を鑑賞。
前2作品と同様に「家族」や「家」といった普遍的テーマの作品で、大自然の映像美とオスカー女優マクドーマンドのエモーショナルな演技が素晴らしかった。
マクドーマンドとあと1名を除いて、出演しているノマドたちは演技経験のない本人たちというリアルさで、殆どドキュメンタリーのような作りとなっているのも良かったように思う。
ただ、その生き方に共感できるかと言えばなかなか難しく、また登場人物が白人ばかりである点、巨大企業アマゾンが不遇な境遇の放浪者を都合よく使い古しているのではというモヤモヤも感じられ、何か喉に引っかかったような気持ちの悪い余韻となっている気がした。
ショック、ショック、ショック・・・
と歌ってるのはシブがき隊?ピンクレディ?などと茶化すことしか頭に浮かばなかったのですが、リーマンショックの影響はかなり大きいんだとビックリするくらいの冒頭説明。いやまて、日本でもバブル崩壊後の車上生活者やホームレス化した元社長さんとかよくテレビで放映されていたなぁ~と思い出してしまいました。
東海岸じゃ車上生活は無理だと言ってましたけど、都会じゃ車も停められない。それは90年代の日本でも同じでした。車で寝泊まりして、スーツに着替えて就職先へ向かう姿。コロナ禍の今でもあるのかもしれません。
そんな社会派的な作品かと思っていたのに多少違ってました。自然の恩恵を直接受け、人との絆を大切にする生き方。直接の原因はリーマンショックだったけど、敢えて家のない生活を享受する老後生活を描いてました。大病を患っても残りの人生で残せるものなんてない。40年働いても年金だけじゃ暮らせない。あれ?日本と似てるじゃん・・・
そんな中、ファーンの死別した夫について語るところ、「何度も点滴のチューブを押さえてしまおうと思った」。でも「苦しませないほうが良かったんじゃ?」というやり取りでじわりと胸を衝きます。そしてデイブ(デビッド・ストラザーン)の恋心(?)にもじわーん・・・と。
アメリカの中西部の自然。スワンキーの旅の話などを聞いて、こんな老後もいいじゃん!と、敢えてこの道を選んだ彼らに共感してしまった。
良作なのか。。
主人公はあなた。徘徊する人?
主人公が遊牧民ということでなくて、ネットで消費を続けたり、ある大企業に依存したりしている、「まさに映画を観ている、あなた自身」がすでに遊牧民なのですよ、という事ですよね?映画の主人公が、実姉と語り合う場面は、主人公が遊牧する動機を少し説明しているんでしょうけども、もっと説明があっても良いと感じたのは私だけかも知れません。いや、実は説明するまでもなく、もう皆が知らず知らず彷徨い続けていると言いたいんでしょうか。「自分には同居する家族もいて、定着した仕事があるので」とか高い所から見てると錯覚した時点で、もう怪しい生活なんだろうなと怖くなりました。いま、仕事や地位を失い、財産や家族を失い、じゃ、自分には何が残るだろうか?今後、現代社会は農耕社会前の、遊牧し狩猟する時代に退行してしまうのだろうか?いや退行っていったら古代人に失礼だ。すでに現代は、少なくとも認知症の方々が数多く徘徊(放浪)しているが、彼らもまた遊牧民なんじゃないかと愚考してしまった。そもそも徘徊いや放浪する彼らを笑う事などできない。もうあなたが徘徊しているのだから。
ノマドは自由か、不自由か
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