「生きることの原点」ノマドランド みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
生きることの原点
これ程素晴らしい作品だとは思わなかった。アメリカ・アカデミー賞作品賞に相応しい傑作である。題名のノマドとは遊牧民のことであり、本作は、夫を失って現代のノマド=車上生活者になった女性が懸命に生きる姿を描いている。ロードムービーではあるが、ドキュメンタリーでもフィクションでもない、新しいジャンルの作品である。冒頭からラストまで、哀切感溢れる音楽と大自然の景観が効果的に挿入され、心に響く、心に深く染み渡るシーンが多く目が潤みっぱなしだった。
本作の主人公は、アメリカのネバダ州で暮らす60代の女性ファーン(フランシス・マクドーマンド)。彼女は、リーマックショックで夫を失い、キャンピングカーで車上生活をしながら、季節労働者として転々と職を変えて、過酷な毎日を懸命に生きていく・・・。
主人公役のフランシス・マクド―マンドの演技が本作の作風を決定している。彼女を車上生活という環境に放り込んで生活させて撮ったような嘘のないリアルな演技である。主人公を含め仲間達の境遇については、敢えて劇的な再現ドラマにせず、モノローグを使って説明している。淡々とした台詞の中に、様々な感情が織り込まれていて胸を打つ。
主人公はキャンピングカーで全米を移動するのだが、カメラは車の後ろを追っていく。車の前方を撮ることはない。あくまで主人公に寄り添っていくという作り手の姿勢を端的に現わしている。
主人公が圧倒的景観のアメリカの大自然の中に溶け込んでいるシーンは、自然と人間の一体化、自然とともにある車上生活者の生き様を表現している。
車上生活者達は物質的余裕のない生活をして生きている。辛いことが多い、孤独な生き方であるが、彼らの生き方は生きることの原点である。起伏の少ないストーリー展開にも関わらず本作を感動的作品に昇華させているのは、過酷な環境の中で、生きることの喜怒哀楽、醍醐味を感じながら、毎日を懸命に、真摯に生きている彼らの姿が美しいからである。
コメントありがとうございます。
私の過去のレビューを見ながら映画についてボーっと考える時間の中で、様々な方のレビューも再確認していました。
この作品に関しては、非常に珍しい作風だと感じていたのですが、フォロワーの方から、中国人監督の作品で非常に日本通の方だとお聞きし、納得しました。
今後ともよろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
野垂れ死の美学・・・
みかずきさんの書いて下さったこと。
その通りです。
野垂れ死を覚悟して、生きる・・・
多分に情に流された文章ですので、理論的に深い意味はありません。車の中で事切れても、餓死しても、病死しても、救急車など呼ばれては迷惑・・・
そんな覚悟だと思います。
ファンがそう思っているかは、分かりません。
私のこの映画から受けた個人的な感想です。
みかずきさん。こんにちは。
レビューを拝読して映画が蘇り感動を新たにしました。
心に沁みるレビューに感服です。
たくさんの共感ありがとうございます。
私の雑多なレビューに目を通していただけたことに
感謝しております。
移動する車を前方からのカットが無かったのですね
知りませんでした
ほぼほぼ水曜どうでしょうと似た撮影方法なのですね
水どうも基本的にはドキュメンタリーなので似た部分があるかと思います
ドキュメンタリーって編集次第で楽しくもなるし辛く悲しくも出来ますよね
ニュースや報道ではありのままを伝えてほしいものです。
コメント、共感ありがとうございます。
こちらこそよろしくおねがいします。
毎日を懸命に、真摯に生きている、多分それが自分には無いのかなと羨ましかったんだと思います。
今晩は。
多数の共感、ありがとうございます。とともに、みかずきさんのレビューの精緻さ、的確さには驚いております。
今作は、「ライダー」で、”お!”と思ったクロエ・ジャオ監督の実力の真価が発揮されたドキュメンタリー”風”作品であり、現代アメリカの実情を淡々と描いた(amazonで季節労働者として働くファーンを始めとしたノマドの人々の姿。)作品でありつつも、人間としての誇りを失わない姿。
今作は、アメリカ人の監督では、描けないだろうなとも思った作品でもありました。
これからも、素晴らしきレビューを多数、拝読させて頂きたく。
宜しくお願いいたします。では。
みかずきさん、フォロー&コメント
ありがとうございます。
こちらレビューの件数も多くはなく、
書き込みのペースもマイペースで
のんびりのほほんとupしております。
共感頂けるレビューありましたら
今後ともよろしくお願いします。