「劇映画とドキュメンタリーの融合」ノマドランド 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
劇映画とドキュメンタリーの融合
工場閉鎖によって町が消滅し、車上生活者、現代のノマドとなった主人公。同じようにノマド生活を選んだ人たちと様々に触れ合い、アメリカ西部を季節とともに移動していく。
本作品のプロデューサーで主人公を演じるF・マクドーマンドと、デビッド役のD・ストラザーン以外、主要キャストをみな本人が演じているとのこと。セリフを含めて、ほとんどドキュメンタリーのようであり、それでも劇映画の構えにはなっている。
車上生活者と聞くと、社会から孤立した悲惨な状況を想像するが、現代のノマドたちは、自分にとって最も大切な生き方を自ら選んだ者として描かれている。主人公が姉に無心に行くシーンや、子供たちと暮らすデビッドを訪ねるシーンの結末が象徴的。このあたりの構成は、しっかりと劇映画になっている。
砂漠、バッドランド、セコイアの森など、アメリカ西部の風景が壮大。特に夕焼けのシーンが美しい。それにしても、アマゾンで働く人向けのRVパークというのがあるんだね。
アメリカならではの作品に見えるが、振り返ると、原発事故で故郷を離れさせられた人たち、道の駅などにいる車上生活者、季節労働者など、日本の現実にも重なって考えられる。
「ホームレスじゃない。ハウスレスだ」「ノマドはさよならを言わない。また路上で会おうと言うだけ」といったこの作品のキーとなるフレーズが心に残る。
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