劇場公開日 2021年3月26日

「放浪の民…そして自由」ノマドランド bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5放浪の民…そして自由

2021年5月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

アカデミー賞・作品賞ということで鑑賞。アカデミー賞らしい、社会に訴えるヒューマン・ドキュメンタリー風の作品。決して面白さや楽しさを求める娯楽作品ではなく、ノマド(遊牧民)である主人公の生活を通して、自分たちの生活を見つめ直す機会となる作品である。

夫を亡くし、工場の傘下であった街が、工場の廃業と共に閉鎖され、60歳を超えているにも拘らず、ノマドとなる道を選んだファーン。バンを改良したキャンピングカーで、北から南へとキャンプ地へ。季節労働のパートで日銭を稼ぎ、あるもので暮らし、自然と共に生きる生活。

何モノにも束縛されないで、ある意味自由気ままに旅をしながら生活するのは、毎日あくせくと時間に追われて働く現代人にしたら、理想の生活かもしれない。また、行く先々で、同様のノマドの人々と出会い、友情を育むが、同時に同じだけの別離も経験する。こうした生活者の中に、高齢者も多く、その人達がキャンピングカーで集える場所があるのは、広大で、自由の国のアメリカだからこその姿なのだろう。

しかし、一見、自由と思われる生活も、ホントにそうなのだろうか…?人は人と繋がってこそ生きていける。デイブがノマドをやめ、息子の家に納まったのは、ホームの穏やかさと孫の温もりを感じたからなのだろうし、ファーンの腕の中で、デイブの孫がスヤスヤと眠りに落ちるシーンは、ノマドの自由であるが厳しい生活との対比として、ファーンの心の葛藤が伝わってきた。

主演のフランシス・マクドーマンドは、この作品で3度目の主演女優賞と作品賞を受賞したが、創られた演技をしているというのではなく、ノマドの一人となって、ノマドの日々の生活を送る姿がリアルに描かれており、これまでの主演女優賞とは、ひと味違った感じもした。

改めて、ファーンと同じ年齢の自分だが、これからの余生を考えた時に、こうした生き方は、決して選択しない生き方であると断言できる。

bunmei21
bunmei21さんのコメント
2021年5月3日

そうなんですね。ありがとうございます😊

bunmei21
またぞうさんのコメント
2021年5月3日

マクドーマンド、主演女優賞は3度目のようです。

またぞう