劇場公開日 2021年3月26日

「F・マクドーマンドの人生が結実したような一作。」ノマドランド yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5F・マクドーマンドの人生が結実したような一作。

2021年4月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『ファーゴ』(1996)や『スリー・ビルボード』(2017)の主演など、順調にキャリアを積んできたフランシス・マクドーマンドの集大成的な作品です。特に『スリー・ビルボード』のミルドレッドと本作の主人公、ファーンの人物像には(単にマクドーマンドが演じているというレベルには留まらない)明らかな連続性があります。

ファーンを通して見るアメリカの風景は確かに荒涼としてはいても美しいのですが、より印象的なのはマクドーマンドの淡々として、何気ない演技。キャンピングカーで調理をし、少し遠方を眺めるように視線を向ける。たったそれだけの動作なのに心を掴んで離しません。『スリー・ビルボード』で何もかも失い、すさんだミルドレッドの心象風景が、このキャンピングカーを取り囲む環境だとしたら、その中で自分なりの生活を確立しているファーンは、救済を得たミルドレッドではないか、と思えてきます。

彼女の演技がこれほどまでに印象的なのは、彼女が本作に並々ならぬ情熱を傾けていることが大きく影響しているでしょう。本作の監督であるクロエ・ジャオの起用も自ら行い、製作にも携わるほどです。

本年度のアカデミー賞作品賞候補は、『Mank/マンク』や『ミナリ』、『シカゴ7裁判』など良作が揃っていますが、本作も是非健闘して欲しいです!

yui