劇場公開日 2021年3月26日

「見方によってはちょっと羨ましい生き方かも~」ノマドランド 星のナターシャnovaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5見方によってはちょっと羨ましい生き方かも~

2021年4月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

家や職を失い、大きめの車を改造して最小限の家財道具を積み込み
職と暮らしやすい気候を求めて、広大なアメリカ大陸を
自由に行き来する高齢季節労働者を追った
まるで、ドキュメンタリーの様な作品。

特に大きな出来事は起きないのだけど
彼らの日常そのものが、出会いと別れの繰り返しであり
時には自然の厳しさによって、静かに眠れない夜もある。

それでも彼らの生き方を観ていると
都会では味わえない広大な土地ならでは風景と
時には野生動物などにも出会ったり
時間にも場所にも縛られない生き方は
ちょっとうらやましくもある。

広大なアメリカ的、生き方だよな~

で、月に8回ほど映画館に通う中途半端な映画好きとしては

主人公のファーンは他の町から
夫の住む町にやってきた来た。
夫を亡くしてからも、町を離れずに
夫が生きた町に拘って生きてきた。
皮肉なことに、そこが企業城下町であったために
企業が倒産してしまうと
町そのものがゴーストタウンとなって
家も仕事も失ってしまった。
もっと早く生まれた町に戻っていれば
また別の生き方があったかもしれないのに~

けれど、ノマドとして暮らすうちに
住むところに拘る心がどこかに溶けて行く。

1~2年過ぎたあたりだと思うが
冒頭に出てきた貸倉庫へと戻ったファーン。
彼女がここで何をするか
静かな中に硬い決意を感じる。

この映画を格差社会の現実と観るか
何にも支配されない自由な生き方と観るか
案外深い映画だと思う。
ライムスター宇多丸さんの解説では
彼女が白人女性だからできる生活であって
黒人だったら無理と言うのも
この映画の隠れた問題定義かもしれない。

本物のノマド暮らしをする人たちが多数出演していて
生活の様子がとてもリアルでした。

星のナターシャnova