劇場公開日 2021年3月26日

「ドキュメンタリー映画?」ノマドランド けいちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0ドキュメンタリー映画?

2021年4月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 仕事帰り、期待を込めて公開初日に観に行きました。NHKのドキュメンタリーのような内容でした。長年連れ添った連れ合いに先立たれ、車に荷物を積んで出かけて行くという内容は、高倉健さんの「あなたへ」を思い出しました。がしかし、健さんは死んだ奥さんの故郷に散骨する、という目的がはっきりとしていましたが、本作の主人公は目的が見えません。
 アメリカを舞台にしたロードムービーをいくつも観てきました。いずれも面白い映画ばかりでした。例えば1991年頃に観たデビットリンチの「ワイルドアットハート」は本当に面白く魂を鷲づかみにされた記憶があります。
 翻って本作は、旅先で何も映画らしいエピソードがありません。年寄りばかりだから仕方ないですが、出演している人の外観が魅力に乏しく、起伏の少ない内容なので、「面白かった」という感覚とは無縁の映画です。では、心に刺さるかというと、全然刺さりません。しかも出演している年寄りは皆さん自分勝手でわがままな人たちばかり、という印象で、僕たちを導いてくれるような立派なことも、全然言ってくれません。
 もちろん主人公を通して現代アメリカ人に対して言わんとしていると、訴えたいことは何となく分かるのですが、僕は日本人なので残念ながらあまり共感もできませんでした。もちろん、ドキュメンタリーフィルムと割り切れば良いのかもしれませんが、お金を払って観に来た人の気持ちも考えてほしい、とも思います。
 そもそも僕が息子の立場なら、父母にこのような振る舞い(車に乗って無目的にふらふらどこかへ行くこと)は止めてもらいたいですし、僕が年寄りの立場になったとしたならば、このように人様に多大な迷惑をかけうる振る舞いはしたくありません。映画の中のあるおばあさんは肺のsmall cell carcinomaになって、余命いくばくもないので好きなことをする、好きな場所で死にたい、と言っていますが、客死は現地の人たちに多大な迷惑をかけますし、治療放棄は一種の自殺に近い感覚を周囲の人に与えるので、家族に嫌な思いをさせるだけです。
 死を迎える者は、残された家族が納得できるように、できるだけ家族に悔いを感じさせないように振る舞う義務があると思います。ましてや酸いも甘いも嚙み分けた老人であれば尚更です。それが出来ない老人は人生の先輩としてもまったく尊敬も出来ません。

けいちゃん
Mさんのコメント
2024年4月15日

子どもの立場からの話は説得力がありました。

M