劇場公開日 2021年3月26日

「意思のある「ノマド」という生き方」ノマドランド キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0意思のある「ノマド」という生き方

2021年4月1日
Androidアプリから投稿

経済至上主義社会から弾かれた被害者たちの、「悲痛」「厭世」「互助」を描く映画ではなかった。

「将来的な安定」
「暖かな団らん」
「柔らかなベッド」

我々はこれらを幸せの象徴かの様に理解しているが、そうではない価値観があることをあらためて気付かされる。

その良し悪しを問う映画でもない。

自家用車で寝泊まりする人々は日本では「=貧困・可哀想な人々」として捉えられがちだが、ここで描かれる人々は身寄りもあるし、共に生活しようと求めてくれる人もいる。

繰り返し登場する「恐竜」と「石」。
自分が世界に生まれた意味とは何なのか。
その繁栄の末に何を残すのか。
それは偉人だけに与えられた命題ではない。

実際、これを観客として見ていて急に思いが浮かぶ。
「え?私とこの主人公、幸せなのはどっちだろう。」
自らの人生、生き方そして死に方を自分で選ぶ「ノマド」と、資本主義の中で振り回される我々。

他人は自分の人生を生きられない。
正解なんてない。

相対的な平均を基準に幸せを計るのか。
自分の満足をもって幸せと感じるのか。

映画としての評価は、何しろ出演している人たちの素晴らしさ。
そして切ない音楽とアメリカの絶景の素晴らしさ。

観ている間は正直クライマックスに見えない流れも、こうして書きながら思い返すと、感慨が溢れてくる。

See you down the road.

傑作です。

17

キレンジャー