「意思のある「ノマド」という生き方」ノマドランド キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
意思のある「ノマド」という生き方
経済至上主義社会から弾かれた被害者たちの、「悲痛」「厭世」「互助」を描く映画ではなかった。
「将来的な安定」
「暖かな団らん」
「柔らかなベッド」
我々はこれらを幸せの象徴かの様に理解しているが、そうではない価値観があることをあらためて気付かされる。
その良し悪しを問う映画でもない。
自家用車で寝泊まりする人々は日本では「=貧困・可哀想な人々」として捉えられがちだが、ここで描かれる人々は身寄りもあるし、共に生活しようと求めてくれる人もいる。
繰り返し登場する「恐竜」と「石」。
自分が世界に生まれた意味とは何なのか。
その繁栄の末に何を残すのか。
それは偉人だけに与えられた命題ではない。
実際、これを観客として見ていて急に思いが浮かぶ。
「え?私とこの主人公、幸せなのはどっちだろう。」
自らの人生、生き方そして死に方を自分で選ぶ「ノマド」と、資本主義の中で振り回される我々。
他人は自分の人生を生きられない。
正解なんてない。
相対的な平均を基準に幸せを計るのか。
自分の満足をもって幸せと感じるのか。
映画としての評価は、何しろ出演している人たちの素晴らしさ。
そして切ない音楽とアメリカの絶景の素晴らしさ。
観ている間は正直クライマックスに見えない流れも、こうして書きながら思い返すと、感慨が溢れてくる。
See you down the road.
傑作です。
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