「クロエ・ジャオという才能を思う」ノマドランド 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
クロエ・ジャオという才能を思う
クロエ・ジャオの才能に前作『ザ・ライダー』でぶっ飛ばされた者としては、いささか呑み込みにくい映画ではある。『ザ・ライダー』でも取り入れていた、自然の中に素人の俳優たちを置くというアプローチがここでも功を奏しているから。ただ、『ノマドランド』は先に原作があり、映画化権を取得したフランシス・マクドーマンドから依頼されて監督に就任していることもあり、企画をどう料理するかという試行錯誤の中で、得意の演出アプローチに寄せていったように感じる。というのも、同じリリカルな大自然の描写も、ただただ詩的であった『ザ・ライダー』と比べると、より理屈に裏打ちされた表現に見えてしまう。いい悪いの問題ではなく、受ける印象として、前作の表現の方が純度が高いのだ。
もちろんジャオは、プロの監督としてオファーを受けて、自分の得意分野の中でいい仕事をしたに過ぎない。上記のような戸惑いは、ジャオの過去二作を観ていない観客にはまったく関係のないことだし、別にわざわざ予習復習をして比較する必要もないことだと思う。『ノマド』はいい映画だし、実際高く評価されていてアカデミー賞も狙えそうだけど、個人的には『ザ・ライダー』も観て欲しいですという気持ちを、もしこれを読んでくださる方がいらっしゃるなら、ひっそりとお伝えさせてください。『ノマド』が気に入った人にも、少し座りが悪いと感じた人にも、本当におススメですので。
(どうしても一件、これも好き嫌いの問題かも知れませんが、『ノマドランド』の音楽はちょっと饒舌すぎて、大切な瞬間を時々ぶち壊しにしているように感じます。もったいない。)
お返事ありがとうございます♪
感動です。
遅ればせながら、ザ・ライダー、ようやく鑑賞。その後、Short cutの評も拝読させて頂きました。
「最後の西部劇」なるほど!
明日はノマドランド鑑賞してきますね。この順序で見られて良かったです。嬉しいアドバイスに感謝致します。
pipiさん、過分なお言葉ありがとうございます!本当に励みになります。『ザ・ライダー』、きっと観て損をするような映画ではないと思うので、ご覧いただけると嬉しいです!